2010年10月4日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

買い物難民 都会でも

商店街消え 孤立する高齢者


 「経済大国」といいながら、買い物もできない人が600万人とか800万人いるという「買い物難民」。第2弾は、大都会の特集(第1弾は7月26日付)。大阪でつくられた「買い物難民研究会」の模様と、日本共産党国民運動委員会の団地調査のリポートです。


団地自治会 打開へ動く

 多くのまちではかつて、その中心部に商店街があり、魚屋、肉屋、八百屋、豆腐屋など日常の食生活に必要な生鮮食料品のほかに乾物屋、総菜屋、米屋、酒屋といったお店も並び、日常生活を送る上での不自由はなかったのです。

 ところが近年、大都市でも郊外大型店の進出により、商店街に空き店舗が増え、“シャッター通り”が広がっています。

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 とりわけ大都市の周辺部に1960〜70年代に供給された公営・UR(旧公団)団地で高齢者を中心に買い物に不自由する“買い物難民”が増えていることが社会問題になっています。

 こうした事態を打開するにはどうすればいいのか、日本共産党国民運動委員会で8月に首都圏四つの団地を調査しました。団地自治会の取り組みや、それを支援する行政の後押しで解決の道筋がみえてきました。

 横浜市栄区にある公田町団地(1160戸)では、その中心部にあったスーパーマーケットが撤退、その後出店したコンビニも姿を消しました。その結果、団地住民は坂道を下って大通りにでるか、約2キロ離れた大船駅までバスで行かなければならなくなりました。

 こうした事態を重視した団地自治会は「住民の要求に基づいて活動するのがモットー」として、孤独死や買い物に困難な事態をどう改善するかに取り組み、横浜市栄区との協議を重ねながら、2009年6月に「団地DEお互いさまネット」を立ち上げました。

 横浜市の「見守りネットワーク構築支援事業」のモデル地区が選ばれたことも事業を推進するうえで大きな励ましになりました。5回にわたるタウンミーティングでの住民要望に沿いながら、まず取り組まれたのが毎週火曜日、空き店舗横の広場で買い物の不便さを補うための野菜やお米などの食料品を販売する「あおぞら市」の開催でした。

 住民生活を継続的に支援するためには拠点が必要だとの認識が生まれ、空き店舗をNPO法人がURと賃貸契約を交わし、ことし4月、みんなが集う「サロン」、多目的スペース「集いの場」、相談室、高齢者などの見守りや生活支援の拠点となる「安心センター」などからなる「いこい」が発足しました。

 家賃引き下げで協力したUR都市再生機構、厚生労働省の地域介護福祉空間整備等施設整備交付金を受け、空き店舗の改修費に充当したことも「いこい」設立への重要な資金援助となりました。

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 団地を、かなりの人口を抱えた地域社会と位置づけるならば、行政やUR都市再生機構は、その地域社会の活性化にかかわることは当然です。そもそも団地内商店街の採算が成り立つように家賃を引き下げるなどの方策を講じるべきです。

 スーパーについては、その出店にあたりインフラ整備にかなりの費用支出をしているわけですから、それに見合った役割を果たすように、スーパーを指導すべきです。07年、経済産業省はその告示で「大型店の社会的責任の一環として、大型店がまちづくりに自ら積極的に対応すべき」としています。

 (団地における「買い物難民」の実態について、『議会と自治体』10月号にリポートを書きました)

 (日本共産党国民運動委員会・高瀬康正)

「目で確かめ 買いたい」

大阪で研究会

 大阪でも買い物難民問題への関心が広がっています。「買い物難民研究会」が大阪で8月に開かれました。総合社会福祉研究所(大阪市天王寺区)の主催です。

 研究会で報告した中部学院大学人間福祉学部講師の新井康友さんは、もともと「孤独死」の研究者です。

 最近、孤独死のある特徴に「脱水症状が増えていること」に気がつきました。さらにお年寄りの救急患者や死亡例を見ると、死者の解剖で胃のなかから、男性は酒のつまみ、女性はお菓子類が出てくるなど、「やせて栄養障害が多くなっている」ことです。それが「買い物難民問題」の研究につながってきたといいます。

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 研究会ではさまざま実態が報告されました。

 大阪市の南部で福祉関係の仕事に従事する男性は「地域はまるで買い物弱者のオンパレードです」と語ります。

 とりわけ低所得者の多い市営住宅周辺でその傾向が強まっているといいます。古い建物、5階建てでエレベーターのない住宅。年金頼み、満額もらっても月6万円ほど。周辺からは地域密着型の商店はつぶれ、大型スーパーも郊外へ。

 「移動手段を持たないお年寄りは、ちょっとした食料などの買い物や、電気製品の修理一つにしても、年々困難になっている。郊外型大型スーパーでさえ経営難から撤退することもある」とその男性は指摘します。

 戸別配達をしてくれる生協も全戸数に行き渡っていないといいます。

 「チラシをみるだけではだめなのです。やはり自分の目で見て、確かめて買いたい、買い物は人生の楽しみの一つなんですね」

 こうした傾向の背景に「お年寄りの孤立化、低所得という大きな問題と同時に、家族力の低下も大きい。子どもは成長とともに狭い住宅から離れ、子どもとの関係が希薄になってしまっている」と指摘します。

 老人ホームの職員は、地域のお年寄りに食事を提供している活動を報告しました。月3回提供しているのですが、それを「わらにもすがる思いで心待ちにしている」といいます。

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 参加者から「誰でも高齢化していくのであり、いま車の運転ができることが問題解決にはならない」こと、「買い物が単なる買い物にとどまらず、栄養摂取や生きがい、街づくりにつながっていく大きなテーマ」であることなどが指摘されました。

 研究会は今月中旬にも会を開いてこの問題を掘り下げていくことにしています。(金子義夫)





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