2010年9月30日(木)「しんぶん赤旗」
ベネズエラ国会議員選
変革への支持どう広げる
![]() (写真)街頭テントで有権者に支持を訴えるチャベス政権与党連合のボランティアたち=23日、ベネズエラ・ミランダ州(菅原啓撮影) |
【カラカス=菅原啓】26日に実施された南米ベネズエラの国会議員選挙は、2005年の前回選挙をボイコットした野党が参加するという同国の民主主義にとって新たな局面の中で行われました。改革路線の継続と強化を正面に掲げてたたかったチャベス政権の与党は半数を上回る議席を獲得。与野党の本格的な論戦が復活するもとで、与党が変革への国民の支持をどう広げていくかが注目されています。
選挙結果は、チャベス政権の与党、ベネズエラ統一社会主義党(PSUV)を中心とした与党連合(ベネズエラ共産党含む)が定数165の半数を大きく上回る98議席を獲得しました。一方で、野党勢力が全国の得票合計で500万票台まで伸ばし、与党の得票にあと10万票あまりに迫りました。
与党側は人口の少ない地方の選挙区で多くの議席を獲得したのにたいし、野党側は、人口に比して定数が少ない地方で得票を伸ばしたものの、獲得議席は65議席にとどまりました。
この結果を受け、チャベス政権の改革を支持する立場の日刊紙ベア28日付も、PSUVの勝利は「完全な勝利ではない」として、「真剣な分析」の必要性を強調する論評を掲載しました。
全国マスコミ労組幹部でジャーナリストでもあるフアン・アルバレス氏は、野党の善戦は、犯罪増加やインフレなど具体的な問題をとりあげ、チャベス政権の政治がよくないというイメージをつくり上げる宣伝戦略が成功を収めたものだと指摘。「客観的に見れば、犯罪増加はチャベス政権の責任でもないし、超党派でとりくむべきもの。インフレも収まりつつある。野党の宣伝は根拠に欠けるものだったが、PSUVは、これを打ち破り、真実を説明する組織力をもっていなかった」と解説しました。
チャベス政権は1999年の発足以来、最低賃金を大きく引き上げ、国民に安価な食料を提供する独自の販売システムの構築などを進め、国民生活の向上に力を入れてきました。
無料の医療・教育制度も整備され、その恩恵は貧困層にとどまらず、中所得層にも及んできました。しかし、こうした先進的な制度が時間の経過とともに「当たり前のように受け取られ、むしろ制度の不十分さへの不満がチャベス政権や与党への批判に簡単につながる傾向もある」(国立医療機関で働く女性)といいます。
前出のアルバレス氏は「野党はいろんな問題をとりあげるだろうが、本質的には、財界や米国のいいなりになる昔の政治に戻そうという勢力だ。与党は声高に野党を攻撃するのではなく、彼らを丸裸にして、本質を国民に理解させる論戦を展開してほしい」と語りました。


