2010年9月27日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

バリアフリー化 いま 8割


 高齢者や障害者をはじめ、誰もが使いやすい公共交通機関や建築物の整備促進をめざすバリアフリー新法は、2010年末までに段差をなくし、エレベーターなどを設置することを目標にします。期限まで3カ月余、各地ですすむバリアフリー化の活動を大阪狭山市(南海・狭山駅)と東京・千代田区(JR御茶ノ水駅)から報告します。


「困難」駅にエレベーター

東京・御茶ノ水駅

地図

 「周辺に病院が多い駅なので当然、エレベーターがあると思った。今回、設置が決まってよかった」とキャリーバッグを引く若い女性―。

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 都心を走るJR中央線・総武線の御茶ノ水駅(千代田区)。同駅の利用者は1日約10万3000人、乗り換え客も多い駅です。2010年度末からのバリアフリー化の着工がやっと決まりました。江戸城の外堀だった神田川とがけ下に立地し、狭い場所と構造上の問題からバリアフリー化は進みませんでした。

 08年には病院関係者や患者、住民のバリアフリー化を求める署名1万2000人分余がJR東日本に届けられました。

 計画では、ホームの上部に人工地盤をつくり、エレベーターやエスカレーターで東西の改札口への通路を設置するもの。ホームの幅が4メートルと狭いうえ、聖橋口の広場整備などで「難易度の高い大規模な工事」で完成まで約8年かかる見通し。

 御茶ノ水橋口近くの区立障害者福祉センター「えみふる」は、今年1月にオープンした障害者の地域生活を支援する施設。隣に三楽病院があります。同施設長は「これで便利になります。多くの人たちが利用するので、一日も早くできるといいですね」と話します。

 学生街や楽器店街、喫茶店もあります。沖縄の郷土料理店の店員は「若い人やお年寄りも多くきていただき、活気ある街にしたい」といいます。

 千代田区議会は、交通バリアフリー特別委員会を設置し、駅バリアフリー化を求めてきました。

 地元の福山和夫区議(日本共産党)は、「御茶ノ水駅は構造上の困難があり、エレベーター、エスカレーターの設置は危ぶまれていました。しかし、病院関係者、商店街、地元の住民などの運動で実現の道を開いたことは歓迎です」と語ります。

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 バリアフリー化が「困難」といわれていた御茶ノ水駅の着工が決まったことは大きな影響をひろげています。

 障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会(障都連)の市橋博事務局長(61)は強調します。

 「長年にわたり、エレベーター設置などにとりくみ、なんども要請に足を運びました。日本共産党の議員さんが地元の人の声を聞いて、いっしょに運動をすすめてくれました。べビーカーを押した若い人などがいちばん便利になったのではないでしょうか。みんなの課題として安心、安全な街をめざします」(小高平男)


住民と共産党が粘り強く

大阪・狭山駅

地図

 障害者や高齢者の方から「駅の階段を上がるのは苦痛、改善をしてほしい」との要望が寄せられていた、南海高野線・狭山駅(大阪狭山市)に今年3月にエレベーターが設置されました。住民と日本共産党の活動がみのったのです。

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 これは、党大阪狭山市議団が1999年9月市議会で、「高齢者や障害者に優しい駅にするため、市として積極的な取り組みを」と求めたのが始まりでした。市は、「国の補助制度実施期間内に取り組むように南海電鉄に要望していく」と答弁、取り組むことを約束。しかし、当初、南海電鉄は「バリアフリー化を順次実施しているが、改善対象駅53の中で狭山駅は、乗降人員からみて47番目」という回答でした。

 そこで2005年3月、市民が「高齢者や障がい者が利用しやすい狭山駅にする会」を結成、狭山駅の調査や市担当者や南海電鉄との懇談をかさね、その運動を背景に議会質問を行いました。06年6月議会で市は、「南海と市の担当者レベルの勉強会を行いながら基本構想の作成に取り組んでいきたい」と答弁するようになりました。

 07年1月16日、大変寒い日でしたが、狭山駅で利用者アンケートと要望署名をとりくみました。早朝、通勤者に署名用紙を配り、夜6時〜8時まで回収したのです。駅の安全やトイレ、バリアフリー化などに多くの要望が寄せられました。それらを南海電鉄との交渉の席上、「狭山駅の一日も早いバリアフリー化の実現と利用者要望にもとづく要望書」を317人分の署名をつけて提出しました。

 交渉で江田文男さん(89)は、「二つとなりの金剛駅まで行くとエレベーターもあり楽に買い物ができる。ところが狭山駅に帰るとエレベーターもエスカレーターもなく、階段を死ぬ思いであがったり、下りたり大変です」と訴えました。アンケートで「小さな子どもがいるのでベビーカーの上げ下げが大変なのでエレベーターを」などの意見も出されました。市と南海の間で、エレベーターと通路、多目的トイレなどを含めた駅舎全体のバリアフリー化構想と工事時期、費用負担などについての協議が進められ、基本構想が08年3月にまとまりました。

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 08年6月、宮本岳志氏(現・衆院議員)らとともに南海電鉄交渉をし、「条件が整い次第とりかかる」との回答を得ました。こうして狭山市の09年度予算に1億5000万円が計上され、2010年3月12日に完成。「ほんとうに楽になった」との喜びの声が多くの市民から寄せられています。

 「高齢者や障がい者が利用しやすい狭山駅にする会」事務局長の花岡治さん(64)は、「切実な願いであるエレベーターの設置は、住民と一緒にねばり強く取り組んだことが大きな力になった」と語っています。(大阪狭山市議・北村栄司)


転落防止柵はまだ5%

グラフ

 バリアフリー新法「高齢者、障害者等移動等円滑化促進法」は、高齢者や障害者をはじめ、誰もが使いやすい施設等の整備を促進するものとして2006年に施行されました。交通バリアフリー法(2000年)と建築物のバリアフリー化促進のハートビル法を1本化、見直しをしたもの。同新法では対象を拡大、住民参加の仕組みなどを整えました。日本共産党は移動の自由と安全確保が国民にとって基本的な権利であることを明記し、既存施設も含め事業者にバリアフリー化を義務づけるなど実効ある改善案を主張しています。

 利用者5000人以上(1日)の鉄軌道駅などで2010年末までにバリアフリー化の達成を目標にしています。国土交通省調べでは、2000年度に段差解消した駅は795駅(29%)でしたが、09年度には2160駅(77%)と増えました。一方で、ホームからの転落防止ドアや可動柵の設置は449駅(全駅の約5%、10年3月末)にとどまっています。





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