2010年9月21日(火)「しんぶん赤旗」

英労働党党首選

“不平等招いたニューレーバー”

脱“ブレア路線”進む


 英労働党が5月の総選挙で政権を追われてから4カ月余。党首選挙投票が22日に終了し、25日に新党首が発表されます。立候補者5人のうち、ミリバンド兄弟(兄デービッド前外相〈45〉、弟エド前気候変動相〈41〉)の争いが焦点となっていますが、どちらが党首になろうと、ブレア元首相が唱えた「ニューレーバー」(新しい労働党)路線からの離脱が進むとみられます。(ロンドン=小玉純一)


 党首選では総選挙の総括と党の再生が問われました。労働党はニューレーバーを掲げたブレア党首が1997年の総選挙で勝利し18年ぶりに政権を奪取。以降2001年と05年の総選挙でブレア首相のもと過半数議席を維持したものの、05年は97年比で約400万票を減らし、ブラウン首相に交代後、今年の総選挙で議会過半数を失いました。

 ミリバンド兄弟の弟エド氏は、最低賃金制導入などニューレーバーの成果を確認しつつも、富裕層に甘く不平等社会となった点を厳しく批判。ブラウン政権が金融危機後に導入した富裕層の所得税率50%の恒久化などを主張しました。

 他方、ブレア元首相の後継とみなされている兄のデービッド氏は、この50%税率の将来の引き下げを否定していません。また財政赤字削減策では銀行課税などを掲げており、「ブレア氏との関係が示唆するよりも正統派社会民主主義だ」ともみられています(週刊誌「エコノミスト」最新号)。

世論もそっぽ

 党首選挙投票が始まった今月1日、ブレア氏は回顧録を出版。「労働党はニューレーバーのときに勝利した」「敗北したのはニューレーバーをやめたからだ」と書き、ニューレーバー路線の継続を求めました。ミリバンド弟への事実上の批判です。

 もっとも兄の方も、「ブレア・ブラウン時代は終わった」としてニューレーバー継承を唱えていません。

 世論も労働党にニューレーバー継続を求めていません。無党派層の72%は、労働党の新党首がニューレーバーを掲げたら次の選挙で労働党に投票しないと答えています(ガーディアン紙4日付)。

 もはやニューレーバーからの離脱は確実といえそうです。その一方で、党首選では「兄弟ともブラウン政権の閣僚だった」という批判も出ました。

「イラク侵攻」

 世論との関係でもう一つ注目されるのは、ブレア首相が03年に強行したイラク侵攻をどうみるか、です。同じ調査で無党派層の75%は、イラク侵攻を支持しなかった人物が党首を務める労働党に投票すると答えています。

 05年総選挙で初当選した弟は、今度の党首選で侵攻を「悲劇的な誤り」「大量破壊兵器調査にもっと時間を与えるべきだった」としています。01年初当選の兄は侵攻に賛成し、ブラウン政権で外相を務め侵攻を擁護しました。


 ニューレーバー(新しい労働党) 1990年代半ばに英労働党内の主導権を握ったブレア前首相らが採用した政治路線。保守党が80年代に、規制緩和や行政部門の民営化を進め、中流層の支持を集めたのに対抗し、労働党内の右派グループなどが、労働組合に依存した政党という既存イメージからの脱却を模索。党綱領から生産手段の国有化条項を削除したほか、市場経済と社会福祉政策の両立をうたった「第三の道」を提唱。97年の総選挙で労働党が18年ぶりの政権奪還を果たす要因ともなりました。





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