2010年9月20日(月)「しんぶん赤旗」

主張

「敬老の日」

長寿を安心して祝える社会に


 長年社会に貢献してきた高齢者をたたえ、長寿を祝う、「敬老の日」がやってきました。この日1日だけの取り組みにしないのは当然ですが、ことしはとりわけ高齢者の「孤独死」や異常な猛暑による「熱中症」などの被害、大きな社会問題になった「所在不明」問題などが関心を集める中での「敬老の日」です。年金や医療、介護などの充実に加え、「ひとりぼっち」の高齢者をなくす、きっかけの日としたいものです。

悲惨な戦中・戦後を体験

 「敬老の日」は、「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」ことを趣旨に設けられた「国民の祝日」です。

 いまから65年前はちょうどアジア・太平洋戦争が終わった年です。それから15年さかのぼった80年前は、戦前の日本が中国東北部でいわゆる「満州事変」(柳条湖事件)を起こした前年にあたります。いらい15年間にわたり、中国大陸やアジア・太平洋の各地で戦争が続きました。さらに20年さかのぼった100年前は、日本が武力を背景に韓国に「併合」を押し付けた「韓国併合」の年です。朝鮮半島が日本の植民地とされました。

 高齢化が進み、厚生労働省の調べでは100歳以上だけでも全国で4万4449人にのぼります。そのほとんどが悲惨な戦争や戦後の苦しみを体験してきた人たちです。高齢を迎えた人たちの、「二度と戦争はいやだ」「安心して暮らしたい」という切実な思いに応えることこそ、高齢をたたえ、長寿を祝う、「敬老の日」の趣旨にかなっていることは明らかです。

 そうした高齢者が満足な年金や医療も受け取ることができず、生活もままならず、最悪の場合、社会的にも孤立して、だれにもみとられず息を引き取る事態さえ少なくないというのは、あってはならないことです。貴重な体験の担い手を失うことは、社会にとっても大きな損失です。高齢者が安心して暮らせる年金を実現すること、高齢者に差別医療を押し付ける「後期高齢者医療制度」は直ちに廃止すること、高齢者の生活を支える公的介護の制度は抜本的に充実することなどは、文字通り待ったなしの課題です。

 一人暮らしの老人が「熱中症」でなくなったり、「所在不明」の高齢者が多発したりしたなどの高齢者の社会的「孤立」の問題も、社会の取り組み抜きには解決しません。介護保険制度の導入を機に、高齢者福祉に対する行政の責任が大幅に後退したことは見落とせません。一人暮らしの高齢者の安否確認など行政による見守りと支援の体制強化が急がれます。ボランティアなど地域の自主的な取り組みへの行政の支援も必要です。

国と自治体の責務で

 ことしの「敬老の日」を前に、水戸市で開かれた第24回日本高齢者大会は、「ひとりぼっちの高齢者をなくそう」を合言葉に、「孤立の壁を破って、大同団結した高齢者の底力を発動しよう」と話し合いました。高齢者自身の運動は国民全体を励ますものです。

 ことしは「長寿をすべての国民が喜びの中で迎え、高齢者が安心して暮らすことのできる社会の形成」をうたった「高齢社会対策基本法」制定から15周年にあたります。法律が明記するように、国と自治体が責任を果たし、国民と協力していくことが求められます。





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