2010年9月16日(木)「しんぶん赤旗」

主張

経団連税制提言

身勝手が内需にとどめを刺す


 日本経団連が14日、来年度「税制改正」の提言を発表しました。

 国民の不安と閉塞(へいそく)感を払しょくし、経済成長と豊かな国民生活のために税制と財政、社会保障を一体で「改革」していくことが急務だ―。提言は、このようにのべて消費税率の一刻も早い引き上げと法人税率の引き下げを改めて要求しています。

「究極のバラマキ」

 経団連の提言は、消費税率を速やかに「少なくとも10%」へ、さらに「2020年代半ばまでに…10%台後半、ないしはそれ以上」へ引き上げるよう求めました。法人税率は「先行して少なくとも5%」の引き下げ、早期に2けたの引き下げを求めています。

 暮らしと内需が冷え込んでいるときに、庶民に重くのしかかる消費税を大幅に増税して、大企業に減税を求めるという身勝手極まりない要求です。

 円高が進むと暗雲が立ち込めるように不安が広がる原因は、内需が弱くて外国の需要にしか希望を持てないような日本経済のあり方を抜きには考えられません。家計と中小企業に重い負担を強いる消費税増税は、低迷する内需にとどめを刺す無謀な財源策です。

 京都大学の中野剛志・助教は次のように指摘しています。「需要のない中での法人税減税は、この法人部門の貯蓄を増やすだけで国内投資を促進しない。…法人税減税こそ究極のバラマキだ」(『日経ヴェリタス』6月27日号)

 大企業はこの1年でため込み金を10兆円以上増やして250兆円規模に膨らませています。大企業は配当や役員報酬を増やす一方で賃金も研究開発投資も減らして利益をため込んでいます。法人税を減税しても株主や役員を潤わせ、「カネ余り」を広げるだけです。

 1990年代以降の大型プロジェクトと大企業・大資産家減税の大盤振る舞いで一気に膨らんだ財政赤字も、国民の不安と閉塞感の大きな原因です。「巨額の赤字は将来の増税となってはねかえってくるのではないか」「財政赤字があるから暮らしの予算を増やせないのではないか」という不安と閉塞感です。

 “だからいま、消費税を増税すべきだ”というのは何の解答にもなりません。国民の「将来の増税」への不安は、数ある税金の中でも特に国民の暮らしにかかる税金の増税に対する不安です。消費税の増税は、この国民の「将来の増税」への不安を現時点で実現してしまう最悪のやり方です。

 菅直人首相も「社会保障と財源は消費税を含めた一体的な議論が必要だ」と繰り返しています。暮らしの予算確保のためには消費税増税しかないかのような財界流の議論が横行し、国民の閉塞感をますます強めています。何より、消費税増税で生み出す財源のほとんどは大企業向けの法人税減税に消えていく計算になります。

閉塞状況打開の道は

 必要なのは雇用や中小企業にしわ寄せして利益を増やす大企業の行動を民主的なルールをつくって改めさせ、巨額の利益とため込み金を社会に還流させる改革です。それを通じて内需主導の成長を実現して税収を増やすことです。

 同時に5兆円もの軍事費にメスを入れ、行き過ぎた大企業・大資産家減税を是正する以外に閉塞状況を打開する道はありません。





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