2010年9月11日(土)「しんぶん赤旗」
政府の追加経済対策
大企業支援・事業費水増し
仕事激減・雇用危機打開ならず
菅直人内閣は10日、「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」を決定しました。同対策が景気低迷や円高対策として十分か―見てみました。
円高の影響深刻
「今の仕事も30%の値引きで話が来ている状況で、仕事を請けても利益につなげるのが非常に難しい」(金属製品製造業)。内閣府の景気ウオッチャー調査(8日)には、こうした声が寄せられました。
円高の進行が中小企業の経営に深刻な影響を及ぼしています。
ところが、政府の経済対策は、中小企業に対する金融支援が中心。これまでの政府の取り組みの延長線上にあるものがほとんどです。
信用保証制度や金融円滑化実施のための日本政策投資銀行の財務基盤強化策も、約300億円程度です。
中小企業が直面しているのは、仕事が激減していることです。今、緊急に求められているのは、円高を口実にした大企業による単価たたきや仕事減らしへの対策です。
正規雇用が課題
「『雇用』を機軸とした経済成長をめざす」とうたう政府の「経済対策」。新卒者の雇用対策や正規雇用化のための対策、雇用創造・人材育成の支援などを盛り込みました。
しかし、新(既)卒者雇用対策は、企業への「奨励金」の創設が対策の目玉。しかし、支援期間終了後は、雇用が失われる可能性もあります。
非正規労働者の割合は3割を超えています。サラリーマンの所得の落ち込みが、景気低迷を長引かせています。
家計の懐をあたため、消費を増やすためには、労働者の賃金を上昇させることがカギです。
最低賃金の大幅な引き上げや労働者派遣法を抜本的に改正して労働者保護法に前進させることが急務です。
予備費残を活用
経済対策の予算規模は、2010年度予算に盛り込まれた経済危機対応・地域活性化予備費残額を活用した9150億円。ところが、事業規模は10倍以上の9・8兆円程度に水増しされています。
例えば、事業費の大部分を占める「住宅エコポイント制度の延長」では、ポイントを付与した新築住宅について、エコポイントの対象にならない基礎工事を含め建設費用すべてを事業費にカウントする仕組みとなっています。(山田英明)
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