2010年9月11日(土)「しんぶん赤旗」

追加経済対策の名で規制緩和


 菅内閣が10日に決定した追加経済対策には、都市再生・住宅、環境・エネルギー、医療・介護、観光振興などの5分野で八十数項目の規制「改革」案が盛り込まれました。検討をすすめ、今年度末をめどにとりまとめを行うとしています。


 【医療】 外国から日本に医療を受けに来る人のために「医療ビザ」を創設し、受け入れや滞在の便宜を図ることが盛り込まれました。

 菅内閣は「新成長戦略」で医療を産業として強化することを打ち出し、外国人患者の受け入れ拡大をその柱にしています。外国人は保険外診療なので、富裕層に高度医療を提供することでもうけようというもの。

 全国保険医団体連合会の寺尾正之事務局次長は、「ビザの創設や患者の受け入れ自体がダメとはいえないが、医師・看護師不足の中で保険外の稼げる医療に力点が置かれれば、保険医療にしわ寄せがきかねない。混合診療拡大のてこにする狙いも見える」と懸念を語ります。

 医療ではこのほか、新薬の承認審査期間の短縮のために手続きの見直しを検討するとしています。審査期間短縮は必要ですが、安全性が確保されることが不可欠です。

 【住環境】 住環境の確保などのため高さなどを規制している「容積率」について、都市部での住宅建設や高層化をすすめるために増加します。

 すでに容積率は大幅に緩和されており、小泉内閣時代に「都市再生」の名で超高層ビル建設や大規模開発が相次ぎ、住民追い出しと住環境破壊が社会問題になりました。しかし、景気低迷もあって計画の多くはとん挫。経団連が開発テコ入れのため新たな規制緩和を求めていました。

 新たな方策として、郊外の緑地確保と引き換えに容積率を増加することなどが検討されています。行き詰まった開発計画の息を吹き返らせ、新たな住民追い出しや住環境破壊を招くものです。

 【保育】 「幼保一体化」を含む法案を来年の通常国会に提出すると明記しました。市町村に保育の実施義務がある現在の保育制度を廃止し、保護者が市場で保育サービスを買う「新システム」をすすめます。同システムは株式会社などの参入をすすめ、もうけを保育以外に転用できることを認めます。短時間保育士の活用を改めて周知徹底することも盛り込んでいます。

 【介護】 看護師などが患者の自宅を訪問する訪問看護ステーションの看護職員の配置基準を緩和し、看護職員1人でも開設できる「1人開業」の解禁を盛り込みました。現場の看護師は「患者の療養生活を1人で支えられるかどうか」と懸念を語ります。





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