2010年9月9日(木)「しんぶん赤旗」

なぜいま「一括交付金」?

民主代表選で議論集中


 民主党代表選の中で小沢一郎・前幹事長が、財源を生み出す「一番有効な手段」だとして持ち出している「地方向け補助金の一括交付金化」。もともと民主党の公約でもありますが、なぜいまこれを強調するのか、本当にそれで財源が生み出せるのか、見てみます。(西沢亨子、深山直人)


根底に財源論のゆきづまり

 国から地方に対する支出は、使い道を特定しない地方交付税と、使い道が特定されている補助金・負担金などがあります。

 民主党の主張は、国からの「ひも付き補助金」をやめて、「一括交付金」にすれば地方が自主的に使えて無駄が省けるというもの。国の財源ねん出のために地方への支出を減らす狙いがあります。

 政権交代時、民主党は「行政の無駄をなくせばマニフェスト実行の財源はできる」と主張していましたが、結局、鳩山由紀夫前政権の「事業仕分け」で縮減できた額は約1兆円。子ども手当の財源すらめどがたっていません。そこで菅直人首相は財源として消費税増税を打ち出し、参院選で大敗したのでした。

 小沢氏が「一括交付金」を強調するのは、財源論で菅氏との“違い”を示す狙いもありますが、根底には民主党政権の財源論のゆきづまりがあります。

削減は福祉と教育切り捨て

 地方への国の補助金・負担金は2010年度予算で21兆円。その8割は社会保障・文教関係です。そのうちの約9割が高齢者医療や国民健康保険、介護保険、義務教育など法律で定められた国の負担金です。このなかには民主党政権が始めた子ども手当や高校無償化も含まれています。

 これを使途の定めない交付金化するとしても、総額を2〜3割も減らせば、福祉や教育をばっさり切り捨てることになります。

 小沢氏は、公共事業分野に限っても2、3兆円の財源をねん出できるといいますが、公共事業は3・1兆円しかなく、とても大きな財源はのぞめません。

 小沢氏は、6日のTBS系番組などでそのことを問われて反論できず、「補助金とは別に、全体の裁量的経費が約20兆円ある」などと別の話を持ち出しています。しかし、その根拠もあいまいです。

 一括交付金化について全国知事会は、小沢、菅両氏に出した公開質問状のなかで、「一括交付金の総額については、一括交付金の対象となる現行の補助金等と同額を確保し、いやしくも国の一方的な財源ねん出の手段とすることがあってはならない」と指摘しています。

 麻生渡会長(福岡県知事)は6日、「補助金は大部分は社会保障など削減が難しいもので実態にあわない」と指摘。一括交付金化について「いつのまにか財源ねん出論になっている」とのべました。

 一括交付金の創設は、民主党が昨年の総選挙で政権公約(マニフェスト)に掲げたもので、そこでは「義務教育・社会保障の必要額は確保する」としていました。それを大幅削減するなどというのはマニフェストにも反するものです。

菅氏「困難」逆手に消費増税

 一括交付金化で歳出を削減できるという小沢氏の主張に対して菅首相は「2割、3割も削減できない。国民生活がおかしくなる」などと批判。財源として消費税増税を充てる考えを主張しています。

 しかし、一括交付金化で補助金を削減するのは民主党のもともとの方針です。菅首相は6月に閣議決定した「地域主権戦略大綱」で、福祉などの最低基準を定めた「枠付け・義務付け」を廃止・見直し、来年度から地方に対する補助金を一括交付金に改めていくことを打ち出しました。

 社会保障などの最低基準の撤廃とあわせて補助金を削減しようというねらいです。国の財源保障が後退すれば、自治体が福祉や教育などの最低水準を確保することも難しくなり、地域格差は広がらざるをえません。

 菅首相は、大幅な補助金削減が困難だといっているにすぎず、それを逆手にとって消費税増税を押し付けようとしているのです。

財界と米優先の異常を正せ

 民主党が財源をめぐってゆきづまるのは、大企業・大資産家優遇の税制や年間5兆円の軍事費という「聖域」に手をつけることができないからです。そのため、一方では参院選の審判にもかかわらず消費税増税に固執し、他方は「一括交付金」による財源ねん出という荒唐無稽(こうとうむけい)な議論にゆきつくのです。

 その根底には、財界とアメリカにモノが言えないという日本の古い政治の枠組みを脱せない弱点があります。

 日本共産党は、財界とアメリカ最優先という日本政治の「二つの異常」に切り込んで財源を生み出すことを主張しています。軍事費1兆円の削減をはじめ、東京外環道などの大型開発をやめる歳出改革で4兆円。下げすぎた大企業・大資産家向けの税金を元に戻すことなどの歳入改革で当面3〜4兆円、景気回復後には7〜8兆円を確保します。

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