2010年9月5日(日)「しんぶん赤旗」

最低賃金改定 37府県で目安上回る

貧困打開へ時給1000円切実


 2010年度の地域別最低賃金の審議が大づめを迎え、4日までに42の都道府県最低賃金審議会が答申を出しました。貧困打開や地域経済の底上げを求める世論におされ、37府県で中央最低賃金審議会が示した各都道府県ごとの改定額の目安を上回りました。時給の引き上げ額は、10円から30円。しかし、貧困を打開するには依然として不十分な内容のため、全労連は「全国で時給1000円以上」の実現を求めて運動をすすめています。


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(写真)厚生労働省の前で「最低賃金は時給1000円以上に引き上げよ」と訴える労働者たち=7月12日、東京

 各地の答申によると、東京の時給は30円上がって821円、神奈川は29円上がって818円と、2都県で800円を上回りました。答申が出た42都道府県すべてで、引き上げ額は2けたとなりました。

 しかし、もっとも時給が低い鹿児島や高知など5県では、政府が早期に実現するとしている800円まで158円も離れており、11円から13円という現在の引き上げペースでは、800円を上回るのに十数年かかります。最賃の地域間格差は、09年度の162円から179円に拡大しています。

 都道府県の審議会は、中央最低賃金審議会が示す改定額の目安を参考に審議することになっています。37府県は、目安よりも1〜6円上回る引き上げ額を答申。神奈川県だけが目安を1円下回りました。

 07年に改正された最低賃金法は、「生活保護との整合性に配慮する」としています。厚生労働省の調査によると、北海道、青森、秋田、宮城、埼玉、東京、千葉、神奈川、大阪、京都、兵庫、広島の12都道府県で、最賃が生活保護を下回る逆転現象が起きていました。

 今回の目安では、青森、秋田、埼玉、千葉の4県以外は逆転現象の解消が先送りされる予定となっていましたが、大阪、京都、兵庫でも解消する答申が出されています。

 審議会は、労働者、経営者、公益(学者や法律家など)の3者の代表で構成。6月に政府と経済・労働界が雇用戦略対話で、全国最低800円、平均1000円の早期実現を合意したにもかかわらず、多くの地方で経営者代表が最賃の引き上げに抵抗し、労働者と公益代表による賛成多数で答申を出しています。

 全労連と加盟地方組織などがこの間、首都圏、東北、静岡などで実施した「最低生計費」調査では、労働者がフルタイムで働いて最低限の生活をするには、都市部や地方に関係なく時給1300円台が必要だ、という結果が出ています。全労連は、すみやかに全国一律で時給1000円以上に引き上げることを要求し、審議会答申への異議申し立てを行うなど、運動を続けています。


労働者の声 世論が支持

 全労連調査局長 伊藤圭一さんの話 多くの県で目安を上回る答申があったのは、不況で地域の消費が冷え込むなか、「まともに暮らせる賃金にしよう」という労働者の声を世論が支持したからだと思います。しかし、現在の水準ではまだ低い。政府は、賃金の底支えは中小企業にもプラスだということを示し、本腰を入れた中小企業支援に取り組むべきです。時給1000円以上を実現するため、運動を広げていきたい。


 最低賃金 すべての労働者と使用者にたいして適用される賃金の最低限度。これより低い賃金で働かせることは違法となります。最賃は毎年改定され、都道府県の審議会が答申し、異議を受け付けたうえで、厚生労働省の都道府県労働局長が決定します。

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