2010年9月3日(金)「しんぶん赤旗」

米がイラク「戦闘任務終結」宣言したが

日本政府は無反省


 オバマ米大統領が米軍の戦闘任務終結を宣言したイラク戦争―。2003年の開戦当時、自民・公明政権がいち早く支持を表明し、イラクに自衛隊を派兵したことに関し、民主党政権は「違憲とは考えていない」との立場を表明しています。


 イラク戦争への民主党政権の公式の立場は3月19日に閣議決定した答弁書に示されています。

 答弁書は、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員が提出した質問主意書に対するものです。このなかで、イラクへの武力行使が国際法違反という認識かとの問いに対し、「国際法上正当化されるというのが当時の政府の考え方であった」と指摘。イラクへの自衛隊派兵については、その根拠法となったイラク特措法の規定に従えば「違憲となるとは考えていない」と表明しました。

 答弁書はさらに、イラク戦争を支持し、自衛隊を派兵した自公政権の判断は誤っていたかとの質問に対しては「当時の政府の判断の検証は、将来の課題である」と棚上げしました。

ちぐはぐ

 これは、民主党が野党時代に、イラク戦争を国際法違反と批判し、自衛隊派兵は憲法上疑義があるとしてイラク特措法に反対していた立場に相反していました。

 答弁書が閣議決定されたのは鳩山内閣の時ですが、菅直人首相は当時、副総理でした。

 菅首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」は8月27日に報告書を提出しました。報告書は「イラクの人道復興支援」などの例を挙げながら、「自衛隊は、国際平和協力活動を通じて、平和創造国家としてのプレゼンスを世界に示すべきであり、可能なものについては、積極的に参加を検討すべきである」として一層の海外派兵を促しました。

 これを受けて、防衛省も同31日、2011年度軍事費の概算要求を決定。「自衛隊による国際活動基盤の強化」を図るとして海外派兵の推進を打ち出し、そのための装備や訓練の充実を重点に置いています。

禍根残す

 米軍のイラクに対する武力行使を支持し、自衛隊を派兵するに至った経緯を徹底検証し総括することは、今後の日本の進路にとって非常に重要な意味を持ちます。

 自衛隊のイラク派兵については、名古屋高裁が08年4月、空自の空輸活動が憲法9条違反との判断を示し、確定しています。民主党政権が自衛隊のイラク派兵は違憲ではないとの立場をとり、戦争支持の検証も棚上げするという態度を続けるのであれば、日本の将来に重大な禍根を残すことになります。(榎本好孝)





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