2010年8月25日(水)「しんぶん赤旗」

どうなってる!? この願い

後期高齢者医療制度

年齢差別の温存を画策


 「年齢で差別する制度」「火事が起こっている」。野党時代の民主党は後期高齢者医療制度をこう非難していました。

 「まず火を止めることがわれわれの今の役割だ」(2008年6月3日の参院厚生労働委員会で福山哲郎議員)と即時廃止を主張し、存続に固執する自公政権を批判。日本共産党など4野党共同で、老人保健制度に戻す法案を参院で可決させました。

後退を重ねる

 後期高齢者医療制度廃止の願いは政権交代の大きな原動力となりました。ところが、民主党政権は後退に後退を重ねています。

 まず、廃止を4年後に先送り。保険料抑制の国庫補助を行う約束もほごにし、4月から20都道府県での平均保険料額引き上げを招きました。

 さらに、75歳以上の患者が90日を超えて入院すると病院の収入が激減する後期高齢者特定入院基本料の対象を、4月から全年齢に拡大しました。民主党自身が「病院追い出しにつながる」と批判していたものです。

 ついには、後期高齢者医療制度「廃止」の看板で、高齢者差別の根幹を残す「新制度」をつくろうとしています。13年4月移行をめざし、厚労省の高齢者医療制度改革会議が中間とりまとめを行いました(20日)。

 それによれば、サラリーマンとして働く高齢者やサラリーマンの家族に扶養される高齢者は被用者保険に加入。それ以外の8割以上の高齢者は国保に入りますが、その財政運営は都道府県単位で、市町村単位の現役世代と別勘定になります。高齢者の医療給付費の1割を高齢者自身が保険料で負担します。

医療費を抑制

 病気になりがちな高齢者の医療だけ別勘定にするのは、後期高齢者医療制度の根幹です。その狙いは、高齢者の医療費の増加を保険料アップに直結させ、医療費が増える痛みを「自分の感覚で感じ取っていただく」(厚労省)ことです。また、現役世代の負担を明確にして高齢者に肩身の狭い思いをさせ、医療費抑制を迫ることです。

 高齢者医療制度改革会議の中間とりまとめは、別勘定による「高齢者の医療費にかんする負担の明確化」を後期高齢者医療制度の「利点」だと強調し、あくまで高齢者だけ別勘定にする方針を表明しています。「年齢で差別する制度」の廃止という公約に対する決定的な裏切りです。

 年齢差別をなくすには、差別や給付抑制のしかけを持たない老人保健制度に戻すのが一番です。制度改革の理由に国保の財政難があげられていますが、財政難の最大の原因は自民党政治による国庫負担の半減です。安心の医療を保障するためには、国庫負担の復元こそが必要です。(杉本恒如)





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