2010年8月25日(水)「しんぶん赤旗」

いすゞ 異常な長時間残業

生産回復し要員不足

労組「解雇撤回 正社員に」


 約1400人の期間・派遣社員を一昨年末に中途解雇したいすゞ自動車で、異例の長時間残業が続いています。生産台数が解雇前のピークだった8割まで回復し、要員が不足しているためです。解雇の撤回を求めて裁判をたたかっている12人は、「正社員として職場に戻せ」と訴えています。(酒井慎太郎)


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(写真)いすゞの工場前でビラを配るJMIUの松本さん=4日午前7時すぎ、栃木県栃木市

 4日朝、同社の栃木工場(栃木県栃木市)の門前。「もうクタクタです」と、職場の実態を取り上げたビラが配られました。

 解雇問題で2008年末に結成したJMIU(全日本金属情報機器労働組合)支部の定例宣伝です。この工場で4年近く働き、解雇された松本浩利委員長(47)らが出退勤する労働者にアピール。もう一つの藤沢工場(神奈川県藤沢市)でも宣伝しました。

過労と診断も

 両工場では3月以降、残業が本格的に復活したうえ、休日の土曜日なども返上。栃木工場の一部では夜勤が再開されました。

 JMIUによると、3月から6月の残業時間は、過労死する危険水準に近い月平均で76時間。定年後の再雇用で働くベテランの星野貞雄書記長(61)は、「これまでにない異常な事態だ」と指摘します。

 長時間の残業によって、健康を損なう労働者が相次いでいます。作業中に突然、立っていられなくなった50代の社員は、病院で過労と診断されました。さらに、「もう体がもたない」と再雇用の契約を延長せず、辞める人も出ています。職場では、「非正規をクビにし、今度は社員をモノのように扱うのか」「要員を増やしてくれ」との声が上がっています。

 同社が残業を命じることができる上限は、3カ月で200時間。いすゞ労組との協定の制限です。

 JMIUは、3月以降の残業がこの協定を超え、労働基準法に違反しているとして同社との団体交渉で改善を要求。人員を補充して労働者の安全と健康を守り、組合員らを正社員として雇用するなどの対応を求めました。

 同社は7月末の団体交渉で違法な状況にあると認め、改善策を検討すると表明。しかし、組合員らの正社員雇用の要求には応えず、期間従業員の募集を再開しています。

 同社は08年12月、期間・派遣社員の全員を契約期間の途中で解雇しました。期間従業員については希望退職に変更したものの、応じない労働者は休業させ、賃金を4割カットしました。いずれも、違法との司法判断が示されています。

大幅な黒字に

 解雇の理由にされた減産減益の状況は一変しました。4日発表された同社の4〜6月期連結決算の最終損益は前年同期の赤字から転じて、124億円の黒字。11年3月期の通期業績見通しも上方修正されました。

 「私たちの解雇は何だったんだ」と怒るのは、同社で約3年働いた五戸豊弘書記次長(50)。次の仕事は見つからず、生活保護を受けながら裁判をたたかっています。「即戦力の私たちが職場復帰すれば、正社員の過重労働を解消でき、会社のためにもなる。争議の解決を決断すべきです」と話しました。

 前出の星野さんは、違法な残業をさせる同社の対応について、長時間労働の抑制をめざして4月に施行された改正労基法の趣旨にも反していると指摘。「原告12人を職場に戻すことは、大企業の体力からすれば、何も問題はない」と語り、大企業の社会的責任を果たすよう求めています。





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