2010年8月23日(月)「しんぶん赤旗」

学校変えた自主的授業

教育のつどい

指導要領押しつけに抗し


 22日まで和歌山市内を中心に開かれた「教育のつどい2010」(教研全国集会)の分科会では、新学習指導要領の押し付けに抗して、子どもたちの成長と発達を保障しようという教師たちの自主的な授業づくりや教育課程づくりの実践が報告されました。


目の前の児童から出発

 「教育課程・教科書」の分科会では、東京都内の公立小学校からベテランと新任の2人の女性教員が、「学力」優先の管理教育で学校が荒れていく中、教員同士が思いを語り合い、学校を変えていった経験を報告しました。

 同校では「学力向上」の号令のもと、管理的な指導が横行。「朝15分の学習の時間」も、上から内容が決められ、終わると子どもが疲れきっていました。子どもが授業中騒ぐなど落ち着かなくなり、転任して来た教員から「子どもと通じ合えない」と悲鳴が上がりました。管理職から「指導力不足」とされた教員が病気を理由に退職。病気休職者も出ました。

 組合の分会が主催して食事会を開くと多くの教員が集まりました。「このままではいけない」と話し合い、管理職にも訴えて、困難な学級への支援体制が組まれました。失敗・苦悩を語れる職場に変わりました。

 「上からの押し付けでなく、目の前の子どもから出発したい」という気持ちから校内研究を実施。2年生の担任4人で研究授業を準備しました。疑問や思ったことを書けるワークシートを用意して、子どもが友達の発表を聞くなかで自分でも考えを持てるよう工夫しました。

 研究授業を見学した多くの教員が「1年生のとき、出歩いていた子がしっかり発言している」「子どもって確実に成長していくものなんだね」と目を見張りました。管理職も「子どもたちは確実に変化しています。みなさんの研究の成果です」と感想を述べました。

 新任教員は「自分が楽しいと思えないと子どもたちも楽しいと思えない。どうやったら楽しくできるか工夫しながらやっていきたい」。ベテラン教員は「目の前の子どもたちから出発した創造的な教育活動を若い人たちと進めたい」と語りました。

憲法の精神 歴史に学ぶ

 社会科教育の分科会では、埼玉県志木市立志木小学校の教員(51)が6年生の戦後史の授業で憲法に保障された生存権を根付かせようとした岩手県の旧沢内村の取り組みを取り上げた実践を報告しました。憲法を現実のものとしてきた取り組みが各地にあり、今につながっていることを歴史学習のまとめにしようと考えたからです。

 同村は乳児医療費を全国で最初に無料化した自治体です。4メートルを超す豪雪地帯で、死亡診断書を書いてもらうときにしか医者にかかれなかった村民。それを子どもたちが想像できるように、同村の歴史をとりあげたテレビ番組を上映しました。

 同村は1956年には1歳までに死亡する子が1000人あたり69・7人でした。子どもたちは、村長が中心になって除雪や医師の確保に次々に取り組んだことを知り、乳児死亡率をゼロにする決め手となった政策を考えあいました。「タクシーを使えるようにした」という意見や「産まなければ死なないから、子どもを産まないことにした」という意見も出ました。

 1960年に乳児医療費を無料化しようとしたときには、「国民健康保険法に違反する」と県から指摘され、「憲法違反にはなりませんよ」といって県や国を説得した村長と村人たちの協力。それが全国に広がったことを学びました。「産まなければいい」といっていた子どもは「法律よりも今の命が大事ということがわかった」と感想を寄せました。

 教員は「憲法の精神がいろいろな運動の積み重ねで実現したことを教材化できたら、子どもたちが主権者として育っていけると思います」と話します。





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