2010年8月19日(木)「しんぶん赤旗」

最賃は1000円以上に

審議会で意見陳述


 各都道府県の地方最低賃金審議会で今年度の最賃改定についての審議が行われています。全労連の地方組織が、「最低生計費調査」や非正規雇用労働者の組織化などで、貧困の実態をつかんでいることが注目を集め、各地で意見陳述に立ったり、全労連の調査資料が委員に配布されています。いわて労連の照井正博副議長と、秋田県労連の越後屋建一事務局長の意見陳述を紹介します。


消費拡大へ一石二鳥

いわて労連・照井正博副議長

写真

(写真)最低賃金の引き上げを求めて、訴える人たち=7月28日、東京・日比谷野外音楽堂

 私の職場は、いわて生活協同組合です。パート職員の基本時給は678円〜755円です。私たちは時給額で1000円以上を希望しています。

 私たちが実施した「最低生計費調査」によれば、岩手県でひとり暮らしするには、ほぼ時給1300円が必要となります。せめて時給1000円なら、1日8時間22日勤務で17万6000円となり、現在の高卒初任給を上回る額になります。

 中小企業の経営は、確かに厳しいものがあると思います。国として、生活できる賃金を保障する観点から、経営への補助・援助対策を講じるべきだと考えます。

 最賃改正には、労働者の生活を成り立たせることを重視すべきです。最賃を上げると、「会社がつぶれる」「むしろ失業者が増える」という意見があります。しかし、1999年から全国一律最賃制度を実施したイギリスでは、この10年で、購買力平価換算で706円から1138円へ引き上げられ、転職が減り、生産性も向上したといいます。生活保護が減り、税・社会保険料の担い手が増え、メリットが大きいとBBC(英国放送協会)でも指摘されていました。

 また日本でも、富士通総研の取締役の根津利三郎氏が、「最低賃金引上げは最大の成長戦略だ」と主張しています。アイリスオーヤマの大山健太郎社長もインタビューで、「消費拡大へ最賃底上げは生活水準改善と一石二鳥」だと答えています。


632円では月収11万円

秋田県労連・越後屋建一事務局長

 秋田県の最低賃金を時給632円から、大幅引き上げを実現されるよう要請するものです。

 2009年の1年間、秋田県労連に367件の労働相談がありました。最賃ぎりぎりの賃金のため、生活が成り立たず、多重債務に陥ってしまった方など、貧困が拡大していることを実感しています。

 政府報告によれば、輸出大企業を中心として企業収益は改善していますが、国内の景気は冷え込んだままです。賃金低下と雇用不安が重なり、人々が財布を固く締めているからです。“働いてもなお貧困状態”の労働者をなくすため、最賃の大幅引き上げが必要です。

 秋田県の地域最賃で働いた場合、時間給632円ではフルタイム(8時間×22日=176時間)で働けたとしても、月収11万1232円にしかなりません。毎月勤労統計調査の平均所定内労働時間は155時間程度で推移しており、実際には9万7960円にとどまるのが現実です。

 秋田県の最賃は生活保護水準を時間額換算で5円下回っています。

 昨年5月から6月にかけて、東北6県の県労連と全労連・労働総研が共同して「東北地方における最低生計費試算」を行いました。

 25歳の男性が自立して生活できる最低生計費は月額22万7855円(税・社会保険料含む)となりました。

 京都・首都圏4都県・九州・静岡でも、ほぼ同様の結果となっており、時給にして1300円以上が必要となります。

 私たちが要求に掲げている「全国一律最賃制で時給1000円以上」との整合性がとれるものと考えます。

 最低賃金の引き上げは、貧困対策のみならず、景気刺激策としても有効です。

 「公正取引」確立の点でも、最賃は重要です。企業間取引の力関係で貧困が生み出されないようにすべきです。

 中小零細企業の経営基盤の強化は、労働者の賃金を抑えることではなく、大企業による下請け・中小企業への一方的な低単価設定や、「買いたたき」など不公正な取引を許さない政府の施策や中小零細企業支援策の徹底によってなされるべきです。

 秋田県労連は本年2月、県内25市町村議会に最賃引き上げの陳情を行いました。6月議会の時点で、22議会で採択(採択率88%、継続審査2、不採択1)となり、国に意見書を送付し、最賃大幅引き上げへの関心と理解が大きく広がっています。

 貧困と地域格差の解消のため、早期に時給1000円以上に引き上げることを目標に、大幅に引き上げることを要望します。





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