2010年8月19日(木)「しんぶん赤旗」

明日をめざして 立ち上がる労働者たち

労働相談から組合づくり

地域に根づく 北勢ユニオン

雇用守り頼れる存在


 地域の誰もが入れるローカルユニオン(地域労組)が元気です。三重県の北勢(ほくせい)労連に加入する北勢ユニオンは、雇用を守る労働相談を組合づくりに結びつけ、地域の共同を広げています。(田代正則)


写真

(写真)雇用継続を求め、客待ちのタクシーに宣伝する高橋さん=三重県四日市市

 北勢ユニオンは、退職者などの協力で6人の労働相談員を配置し、JR四日市駅からほど近くの事務所で、毎日誰かが相談に乗れる体制をつくっています。

 北勢地域は、石油化学の集まる四日市市、ホンダの鈴鹿市、シャープの亀山市など、大工場が立ち並びます。08年に「派遣切り」が吹き荒れ、いまも工場からの相談が絶えません。

電話の訴え

地図

 工場構内の売店で働く女性から、相談の電話が鳴りました。

 「上司から嫌がらせを受けています。異動命令を受けました。このままでは続けられません」。厳しい雇用情勢では、新しい仕事を見つけるのは困難です。「どうしても、いまの職場で仕事を続けたい」

 1時間半にわたる電話の訴えをじっと聞いた労働相談員の久賀孝三さん。「会社と交渉しましょう。ぜひ、事務所まで来てください」と呼びかけました。

 事務所にきた女性は、「こんなに親身になってもらって、感激しました」と北勢ユニオンに加入。埼玉にある本社の総務課が応対し、「現地の営業所に連絡して、状況を調べます」と約束しました。

 上司が本人に謝罪し、翌週から対応が変わり、女性はもとの売店で働き続けられることになりました。

 「電話やインターネットでも、相談がやってきますが、相手に事務所まで来てもらい、個別の事情をよくつかんで解決するように心がけています」と久賀さんはいいます。

 北勢ユニオンは09年9月〜10年6月で56件の相談を受けています。解雇・退職強要の相談が最も多く、金銭解決のかたちを取らざるを得ないこともありますが、雇用継続に結びつくよう全力をあげています。

中心になり

 現在の組合員数は約60人。北勢労連議長の芳野孝さんは、「北勢労連のなかで、大きな組合ではありませんが、意味ある存在なんです」と強調します。

 6年前、全労連のローカルセンターがなかった北勢地域で、北勢労連をつくる中心となったのが、北勢ユニオンでした。

 四日市市職員で自治労連出身の芳野さんは「地域の労働者の実態を知りたい」と、中部電力で争議をたたかった労働者を中心につくられた「勤労者友の会」と話し合いました。そこで友の会を団体交渉などで地域の労働問題を解決できるローカルユニオンに発展させようと、19人で北勢ユニオンをつくりました。

 そのころ、全労連から「ローカルセンターをつくろう」と呼びかけを受け、ユニオンの労働相談事例などを議論しながら、北勢労連を結成しました。

 仕事を休めない労働者のため、メーデーは夕方に行う「トワイライトメーデー」を開催するようになりました。商店街をデモ行進し、終了後は飲食店で交流会。「街に活気が出る」と喜ばれ、メーデーに商店会長があいさつにくるようになりました。

 地域の組合づくりが広がり、医労連の組合が誕生するなど、この6年で、北勢労連の組合員数は2・5倍となりました。

解雇認めぬ

 北勢ユニオンでも、労働相談を通して、タクシー労働者が集まり、組合を結成しました。

 「正社員以外の非正規雇用労働者は、有給休暇がまったくない」「障害者割引の負担分を全額労働者に押し付けるのはおかしい」などの問題を解決し、名鉄四日市タクシーで組合員が13人まで増え、昨年12月に産別組織・自交総連の支部として加盟しました。

 会社側は、就業規則を変え、今年4月に高橋紀郎支部副委員長の雇用契約を打ち切りました。「組合を狙い撃ちした雇い止めだ」と抗議。会社が交渉に応じないので、裁判でたたかっています。

 高橋さんは雇い止めを認めないための出勤を続け、駅前のタクシー乗り場で宣伝をしています。「私はお客さん第一で、無事故で頑張ってきました。労働者を搾取し、もうけをあげる会社をただしたい」と話します。

 芳野さんは、「労働相談を受けるところから、組合の中心となる労働者をつくって、日常的に職場をよくする組合をどんどんつくっていきたい」と強調しました。





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