2010年8月11日(水)「しんぶん赤旗」

原水爆禁止世界大会

草の根の行動が世界を動かした

核兵器廃絶が現実的課題に

「抑止力」論の打破へ

記者座談会


 2日から9日まで開かれた原水爆禁止2010年世界大会は、5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議が「核兵器のない世界」の実現を決議したことをうけた次のステップを議論し、核兵器廃絶条約のすみやかな交渉開始を各国政府に求める国際世論をいっそう広げる行動をよびかけるなど、大きな成果をあげました。大会取材にあたった記者が振り返りました。


情勢が激変

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(写真)原水爆禁止世界大会・広島の閉会総会で「We shall overcome」を歌う参加者=6日、広島市

  今年はNPT再検討会議を受けて、核兵器廃絶が国際政治の現実的課題となる中で、原爆の日を迎えた。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長や米政府代表が初めて広島の平和記念式典に出席するなど、様変わりだった。

  国際政治での変化のきっかけは昨年4月のオバマ米大統領のプラハ演説だったが、その後の核廃絶をめぐる情勢の変化は急激だ。

  NPT再検討会議の際のニューヨーク行動に参加した人たちが、草の根の運動が世界を動かせることに自信をもち運動の先頭にたっていた。大会を通じて廃絶に向けた流れに確信をいっそう深めたようだった。

  国際会議の「宣言」は具体的な行動として、核兵器廃絶条約の交渉開始を各国政府に求めることを打ち出したが、次のステップが非常に明確になった。

  潘事務総長も、広島、長崎の両市長も廃絶条約の実現を強調していた。もはや国際政治の課題になりつつあるといってもいいだろうね。

  被爆者が生きている間に核兵器のない日を実現できるように努めよう、という潘事務総長の呼びかけは、感動をよんだ。

多面的議論

  そのためにも「核抑止力」論、「核の傘」論の克服が重要な課題となっている。大会でもその点が多面的に論議された。

  大会に参加したアラブ連盟の代表は「『核抑止』は大ウソで、そんなものは存在しない」と発言した。

  韓国の代表は「『核抑止力』論は、核兵器による恐怖の迷路から脱出することのできない考え方だ」と論破したね。

  その点で、菅直人首相が会見で、改めて「核抑止力は必要」と発言したのは重大だ。長崎での被爆者との懇談では「発言は取り消してほしい」と詰め寄られた。

  日本では北朝鮮の“脅威”を言い立てて「核の傘」を正当化する議論があるが、北朝鮮の核開発以前から日本は米国の「核の傘」のもとにあった。英海軍退役司令官の海外代表は「『核の傘』が日本に核攻撃の危険を呼び寄せる」と批判した。

  熊本の被爆者は「肝心の日本政府の姿勢を変えなくてはいけない」と語っていたが、その通りだ。

体験の継承

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(写真)原水爆禁止2010年世界大会広島の開会総会に参加する海外代表=4日、広島市

  被爆者の平均年齢は76歳を超えている。「二度とこんな悲劇が人類にないように」との願いに寄り添った運動はますます重要だ。

  国際会議の「宣言」は、被爆者や世界の核被害者の体験とたたかいを「人類的な事業」として継承するよう呼びかけた。

  カナダ在住の被爆者の女性は「被爆体験の継承は被爆者だけの課題ではなく、みんなの課題だ」と発言した。なるほどと感じたね。

  大会で発言した国連のドゥアルテ軍縮担当上級代表は、「被爆者は核戦争の人道的影響を世界に教える最良の教師だ」と述べ、被爆体験を世界中の学校教育に取り入れることを提案したね。

政府と連帯

  世界大会に政府代表が参加するようになって10年、政府代表と反核・平和運動との共同が大きく発展していると実感した。

  そうなんだ。国連事務総長とNPT再検討会議で議長をつとめたカバクチュラン氏が世界大会にメッセージを寄せた。大会が国際政治を動かす力をもっているんだと確信になった。

  エジプト政府代表は「反核・平和運動と緊密に連携していくことが重要だと確信している」と述べ、ドゥアルテ氏も「核兵器よりも強力なのは、共通の大義のもとに結集した世界の人々の連帯です」と強調した。

  広島、長崎両市長の「平和宣言」でも市民社会の役割を強調しているね。

  核廃絶をめぐる情勢の急激な変化を生みだしたおおもとにはやはり草の根の運動がある。5月のニューヨーク行動で示されたような、反核・平和運動のパワーこそが各国政府を動かしている。

  なかでも日本の草の根運動が大きな役割を果たしている。毎年、原水爆禁止世界大会を開き、日本全国を網の目で行進する平和大行進も続けてきた。この努力が国際政治を動かすことに貢献していると思う。

  いま取り組まれている「核兵器のない世界を」国際署名は700万人を超えている。ニューヨークのNPT再検討会議には600万を超える署名が提出されたが、潘事務総長は世界大会に寄せたメッセージのなかで、「みなさんの努力は、世界的な核兵器廃絶支持の大波をつくり出しました」といっている。

  政府代表の発言を聞いて、「署名をこつこつと積み重ねることで(情勢が)変わっていくことが分かった」と語る参加者もいた。

  地道な努力を通じて、日本政府や各国政府への働きかけをいっそう強めていくことが大切だね。





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