2010年8月5日(木)「しんぶん赤旗」

原水爆禁止2010年世界大会 国際会議宣言(全文)


 4日、広島市で開かれた原水爆禁止2010年世界大会・国際会議の閉会総会で採択された同会議「宣言」(全文)は次の通りです。


 65年前、アメリカの投下した二つの原子爆弾によって広島と長崎は一瞬にして廃墟(はいきょ)と化し、20万余の人々の命が奪われた。その後遺はいまなお被爆者の心と身体をさいなんでいる。被爆者はその苦しみをこえて、核兵器の使用は人類に対する犯罪であると告発し、核兵器廃絶を訴えつづけてきた。その声はいまや世界のゆるぎない流れとなっている。

 我々は世界の人々に訴える―「核兵器のない世界」実現のため、広島・長崎の被爆者とかたく連帯し、ともに行動することを。

     

 諸国民の世論と運動が、国際政治に新たな変化をもたらしている。かつての軍や政治の指導者を含む広範な人々が、核兵器廃絶を支持する声をあげている。

 我々は、2010年核不拡散条約(NPT)再検討会議を核兵器廃絶への「歴史的な転換点」とするため、核兵器廃絶条約の交渉開始を求めて国際的な行動をくりひろげた。

 NPT再検討会議で合意された最終文書は、2000年の核兵器完全廃絶への「核兵器国の明確な約束」を再確認するとともに、「核兵器のない世界の平和と安全」を達成することを決議した。その実現のための「枠組みを確立する特別なとりくみ」を核保有国とすべての国に求め、核兵器(廃絶)条約の交渉開始を求める潘基文(パン・ギムン)・国連事務総長の提唱に注目した。国際緊張の焦点である中東の非核地帯化のための全当事国による会議も2012年に開催することが決定された。

 「核兵器のない世界」が国際政治の明確な目標となったいま、つぎに求められるのは、その実現のための具体的行動である。我々は、核兵器の全面禁止を達成するため、核兵器廃絶条約の交渉と締結を要求する。条約交渉のすみやかな開始を求める行動を世界各国で具体化し、強化・発展させるようよびかける。国連総会などを節目に、国際的な世論の結集をはかろう。

 包括的核実験禁止条約の批准と発効、核分裂物質生産禁止条約の交渉開始、米ロ新戦略核兵器削減条約の発効とさらなる大幅削減、非核兵器国への核の威嚇・使用の禁止もただちに実現されるべきである。

     

 NPT再検討会議において、いくつかの核保有国は、核兵器廃絶への行程の協議や廃絶条約の交渉開始、廃絶の期限設定などを最終文書に盛り込むことに反対し、批判を呼んだ。こうした態度の根底には、核兵器による脅迫で影響力の確保をはかる「核抑止」政策がある。「核抑止力」論は、あらたな核保有を誘引し、核兵器拡散の要因ともなっている。これこそ「核兵器のない世界」実現への最大の障害である。

 核兵器の脅威を根絶するには「核兵器による安全」ではなく、「核兵器のない世界の平和と安全」を達成する以外にない。核保有国とその「核の傘」のもとにある同盟国に、これと決別するよう迫る広大な世論と運動が必要である。それぞれの国の行動を広範な人々の参加で発展させ、相互に連帯し、圧倒的な世論の力で、「核抑止力」論を打ち破ろう。

 我々は、核兵器の先制不使用と使用禁止を要求する。核軍備の強化と近代化、先制攻撃態勢を強めるミサイル防衛に反対し、外国・公海に配備された核兵器の撤去を要求する。中東をはじめとする非核地帯の創設と拡大を支持する。北朝鮮の核兵器問題もまた「朝鮮半島非核化のための6者協議」を含め対話を通じて平和的に解決されるべきである。

     

 被爆国日本が米国の「核の傘」に依存することは、アジアの平和と安全、「核兵器のない世界」の実現にとって重大な障害である。我々は、憲法9条を守り活(い)かし、核兵器持ち込みを認める米国との「密約」を破棄し、「非核三原則」の厳守により日本の非核化をめざす運動、沖縄・普天間基地をはじめ在日米軍基地の再編・強化に反対し、その撤去を求める運動に連帯する。

 我々は、戦争と侵略、武力による威嚇に反対する。イラクの占領とアフガニスタンでの軍事作戦に反対し、主権尊重、外国軍の撤退を求める。民族的権利のためのパレスチナ人民の闘いに連帯する。外国軍事基地に反対し、その撤去を求める運動と連帯する。NATOや日米安全保障条約のような仮想敵を想定した軍事同盟ではなく、国連憲章にもとづく平和の世界秩序を支持する。

     

 いまやひとにぎりの大国が世界を支配できる時代ではない。我々は、すべての国が国際法を尊重し、対等・平等に役割をはたし、市民社会の積極的な貢献によって支えられる新しい世界の戸口にいる。反戦平和、枯葉剤など戦争被害の救済、地球環境の保護、女性の権利と地位の向上、飢餓・貧困・失業の解決、軍事費の大幅な削減と福祉の向上などを求める市民の運動は、新しい世界を創(つく)る重要な担い手となろうとしている。これらの運動、国連、諸国政府、自治体と連帯し、「核兵器のない世界」を築きあげよう。

 被爆65年にあたり我々は、広島・長崎の被爆者、世界の核被害者への支援を強化し、その体験とたたかいを「人類的な事業」として継承するようよびかける。被爆者とともに、そして未来を担う若い世代とともに、いまこそ行動に立ち上がろう。

     

 2010年8月4日

 原水爆禁止2010年世界大会・国際会議





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp