2010年8月2日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

祭りで地域おこし


 夏まつりの季節です。秋田県羽後町の「西馬音内(にしもない)盆踊り」と山梨県富士吉田市の「吉田の火祭り」の魅力を、地域おこしのとりくみを交えてリポートします。


守り継ぎ 老いも若きも

秋田・羽後町 西馬音内盆踊り

 「ヤートーセー、ヨイワナ、セッチャァ」

 囃子(はやし)のやぐらから響くこのかけ声を、踊り子たちは1年間待ちわびていました。

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 秋田県南部に位置する羽後町は8月16日、夕暮れとともに鳴り始める寄せ太鼓で、踊り衣装に着替えを終えた踊り子たちが、いそいそとかがり火が照らす本町通りに集まって来ます。そして長く続いた軽快なリズムがこのかけ声で一転し、いよいよ今年の西馬音内盆踊りが始まります。

 夜が深まるにつれ、子どもたちの踊る姿も消え、熟達したおとなの踊り手がそろい、「幻想的」とも「妖艶(ようえん)」とも評される伝統の踊りが見るものを圧倒します。秘めた踊りとは対照的ににぎやかな囃子が高いやぐらの上で演じられています。

 力強い大小の太鼓に流れるような横笛の音、三味線、鼓、鉦(かね)そして地口(じぐち=うた)。長年守り継いできた人たちに加わり、中高生の盆踊りクラブの女の子たちもたくさん来てやぐらは若い人たちでいっぱいです。

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(写真)やぐら〜から響く囃子に合わせて編み笠や彦三頭巾姿で幻想的に舞う西馬音内盆踊り=秋田県羽後町提供

 一地域で踊り継がれてきた盆踊りが、保存会、実行委員会を中心とするたくさんの人たちの情熱と町をあげての取り組みで、今では3日間で町人口の6倍、10万人を超す観光客でにぎわうほどに発展しました。1981年には国の「重要無形民俗文化財」に指定され、日本の三大盆踊りの一つとなった西馬音内盆踊りは町の人々の誇りでもあります。

 昔を知る年配の方は「以前の踊りはこんなにしなやかではなかった」と言います。「地域おこし」などという言葉もない遠い昔、素朴な自分たちだけの盆踊りに人々は慰められ励まされ、大切に守り継いできたのでしょう。時代とともに少しずつ姿を変えてきても、その奥深い魅力は現代に生きる私たちをも昔と同じように感動させます。

 夜11時には編み笠(がさ)や彦三頭巾(ひこさずきん)をはずした踊り子たちの声援を受けて、囃子方が最後の寄せを披露し、すべてが終了します。

 西馬音内盆踊りが終わると一気に秋が深まり、まもなく稲刈りの季節がやってきます。(金公一・羽後町議)


 西馬音内盆踊り 郡上八幡盆踊り(岐阜)、阿波おどり(徳島)とともに日本の三大盆踊りの一つ。黒い覆面の彦三頭巾をつけた踊り手があやしい雰囲気をかもし出すことから亡者踊りともいわれます。


伝統の行事 住民と共に

山梨・富士吉田市 吉田の火祭り

地図

 高さ3メートルの大松明(たいまつ)七十数本と、家ごとに井桁(いげた)に積まれた松明にいっせいに点火されると、街中はさながら火の海に…。

 山梨県富士吉田市の「吉田の火祭り」は400年の歴史を持ち、富士北ろく地域に夏の終わりを告げる祭りです。富士山をかたどった「おやま神輿(みこし)」と「明神(みょうじん)神輿」の2基が市内を練り歩きます。

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(写真)昨年の火祭り=富士吉田市提供

 この祭りの運営すべてに責任を持つのが14人の「世話人」で、上吉田地区の上、中、下の3町から42歳(厄年)以下の男性で既婚者を条件に選ばれます。一生に一度しかできない大役です。協賛者へのあいさつまわりから、予算の執行、本番での2基の神輿先導まで一切をまかされます。

 「昔は、火祭りの世話人といえば仕事は自由に休めた」と言われるほど地域では名誉ある仕事で、毎晩のように集まっては話し合いながら準備を重ね本番を迎えます。

 今年の世話人代表(中町長老)渡辺剛さん(41)は「伝統的行事は地域にいるものが引き受けてこそ守れるもの」といい、「日本三奇祭の一つをなくすわけにいかない。伝統ある祭りを守ろうという住民のみなさんの協力が地域おこしそのもの」と言いきります。

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 火祭りを支えるもう一つの集団が「御師(おし)団」で、神社側とともに祭りを実行し、おやま神輿の先頭を歩きます。富士講など登山信仰と富士山を結ぶ役が御師で、一行の宿坊が御師の家。戦国時代からの記録が残り、最盛期には80軒以上の御師の家が並んだといいます。

 今は数軒となった御師の家「菊谷坊」17代主人の秋山晃一さん(57)=党富士吉田市議=は18年前に世話人も経験しました。「毎晩のように協賛者宅を訪ね、本番には御師団と世話人の二役をこなし、2日間は夢の中のような忙しさでした。でも、苦労を共にした14人はその後も毎月1回顔を合わせ、親交を深めています。代えがたい仲間を地域につくれた祭りです」と話しました。(山梨県・志村清)


 吉田の火祭り 正式名称は「鎮火祭」。富士山のふもと同市上吉田にある北口本宮浅間神社と諏訪神社両社の秋祭りで、毎年8月26日、27日に開催されます。





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