2010年7月30日(金)「しんぶん赤旗」

選挙総括で批判相次ぐ

民主党が両院議員総会


 民主党は29日、都内で両院議員総会を開き、執行部が「第22回参議院選挙結果について」と題する総括文書を提示しました。

 文書は、改選54議席に対し44議席の獲得にとどまった原因について、参院選マニフェスト発表のさいの菅直人首相の消費税10%発言が有権者にとって「唐突であった」と指摘。低所得層に対する「還付」についても、「具体的な準備と詳細な検討が希薄である印象を深め、失望感を増大させてしまった」としています。

 同時に、消費税増税そのものについては否定するどころか、「消費税を含む税制改革の論議」の推進を宣言するという無反省ぶりを示しています。

 また文書では、「国民の生活が第一」を前面に掲げた昨年の衆院選マニフェストを「原点」として位置づけましたが、後期高齢者医療制度廃止や労働者派遣法の抜本改正、沖縄・米軍普天間基地問題などをめぐる公約違反や国民への裏切りについては一言も触れていません。

 総会では菅首相があいさつし、自身の消費税についての「不用意な発言」について「心からのおわび」を表明しながらも、ねじれ国会のなかで「死力をつくしていきたい」と続投の決意を表明しました。

 総括案に対して出席議員からは、「普天間(基地)のことが入っていない」「もう一度(総括を)やりなおせ」などの意見や批判が相次ぎました。菅首相は、9月の代表選で判断を受けたいとのべました。

米・財界追随に反省なし

 民主党が両院議員総会に提示した参院選総括案は、政権交代から10カ月で「国民から厳しい審判を受けるに至った原因を冷厳に検証しなければならない」とし、「消費税論議が国民に唐突感を与えた」ことや「参院マニフェストの位置づけが不明確になった」ことなどを「反省」点にあげています。

 総括案に添付された参考資料「ブロック別議員懇談会における主な意見について」などでも、「(マニフェストの)内容をガラリと変える必要があったのか」「1年もたたずに新しい内容のマニフェスト。恥ずかしくて配る気になれなかった」など、批判的意見が多数です。総会でも出席議員から同様の厳しい批判が相次ぎました。

国際公約守る

 しかし、総括案では、菅直人首相が参院選マニフェストで打ち出した、アメリカ・財界追随路線についての具体的な「反省」はまったくありません。

 菅首相は6月の党代表選出馬の際、鳩山由紀夫前首相の辞任により沖縄・米軍普天間基地問題の「重荷がとれた」と発言しましたが、今回の総括案で普天間問題に唯一言及しているのも、鳩山前首相退陣で「混乱に対してけじめ」をつけたというくだりです。

 参院選で民主党は、沖縄選挙区で選挙区候補を擁立することすらできず、比例候補の沖縄県連代表も落選しました。政治的焦点の沖縄で、政権党がまともに選挙すらできないという状況への深刻な反省はまったくありません。総会では沖縄選出の議員が「普天間問題を避けて通るなら、厳しいしっぺ返しを受ける」と指摘。しかし、枝野幸男幹事長は「国際公約はしっかり守る」と繰り返すばかりでした。

 今回のマニフェストが法人税減税の財源のための消費税増税を打ち出し、財界・大企業応援の「成長戦略」を鮮明にした点では、菅首相の消費税増税発言が「唐突だった」ことへの「反省」があるのみです。

自民も望まず

 国民は参院選挙で民主党に対し厳しい批判を示しましたが、同時に自民党政治への逆戻りを決して望んではいません。自民党は獲得議席数でこそ民主党を上回ったものの、歴史的惨敗を喫した1998年参院選挙よりも低い得票に終わっています。

 その中で、アメリカ・財界寄りの路線「修正」という根本問題をまともに総括できない民主党―。ここには、自民党政治に代わる新たな政治のビジョンをもたず、異常な対米従属と大企業の横暴な支配という「二つの政治悪」からの脱却への明確な足場をもたないという問題があります。(中祖寅一)





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