2010年7月28日(水)「しんぶん赤旗」

一律1割削減で「元気な日本復活」?

暮らし ムダ削減 「二つの聖域」

概算要求基準 三つの問題


 菅直人内閣は27日、2011年度予算の概算要求基準「総予算の組み替えで元気な日本を復活させる」を閣議決定しました。菅内閣が取り組む初の予算編成作業が今後、本格化します。(山田英明)


どうする 社会保障の「傷跡」

 概算要求基準は、各省庁に対し、社会保障費を除いた一般歳出の1割削減を要請。この目標を超えた省庁には超過分の3倍まで特別枠を追加要望することを認めました。

 各省庁の概算要求に上限を設け、予算の配分に“メリハリ”を付けていく手法は、自民党政権時代から用いられてきた手法でした。

 小泉内閣(当時)の概算要求基準(シーリング)には、社会保障費の自然増を毎年2200億円圧縮することが盛り込まれ、これが、医療、年金、介護、生活保護などの社会保障制度の相次ぐ改悪として具体化されていきました。

 菅内閣の概算要求基準は、(1)社会保障関係費の自然増(1・3兆円)(2)地方交付税交付金(3)マニフェスト(政権公約)施策―については1割削減の対象外としました。

 つまり、それらを除く部分についてはすべて1割削減の対象。ここには、国立大学運営費交付金や私学助成などの教育関連予算、生活密着型公共事業に関する予算、中小企業対策費や農林水産業関連予算なども含まれます。

 1割削減の押し付けが、国民生活を支える予算のいっそうの切り詰めに直結する可能性があります。

 さらに、同基準が削減の対象外にした社会保障費の自然増は、あくまでも現行制度を維持した場合の伸びを認めただけです。

 年金制度改悪や生活保護の老齢加算の廃止、介護保険料の引き上げなど、自民・公明政権時代に切り詰められてきた社会保障制度の傷あとをふさぐためには、改悪後の社会保障制度を維持するだけでは不十分です。

 それどころか、菅内閣の概算要求基準は、社会保障の自然増についても「できる限り合理化・効率化に努める」と明記しました。

「特別枠」で浪費温存の恐れ

 概算要求基準には、民主党マニフェスト施策や「新成長戦略」の関連施策に予算を重点配分するために、「元気な日本復活特別枠」が設けられました。

 「1兆円を相当程度超える」とした特別枠の配分は、公開で行う「政策コンテスト」を経て菅首相が決めるとしています。

 菅内閣の「特別枠」は、医療・介護や環境などの「成長分野」に重点配分する方針です。

 しかし、この特別枠をめぐっては、「そこに何でも放り込んでという心理的な傾向になるのではないか」と仙谷由人官房長官も26日の記者会見で告白しています。

 一律1割削減に反発する前原誠司国土交通相は「新成長戦略」について、「かかわる政策は全部盛り込みたい」(27日の記者会見)と述べています。

 「新成長戦略」による「強い経済の実現」を口実に、空港や港湾などの大型公共事業温存の余地が残されています。

 菅内閣の「新成長戦略」は、医療、介護、保育サービスなどの社会保障・福祉分野や環境分野などについて、「需要を喚起するために必要な規制・制度の見直し、予算編成、税制改革、政策金融による対応等を進める」としています。

 「成長分野」について規制緩和し「需要を喚起する」という手法は、関連する大企業にビジネスチャンスを与えることで、財界・大企業に奉仕するという方向です。

消費税増税への道狙う

 概算要求基準の骨子では、同基準を「ムダを徹底的に見直し、聖域なく大胆な予算の組替えが可能な仕組みとすること」としました。

 「聖域なく」というのであれば、不要不急の大型公共事業を見直すとともに、軍事費と大企業・大資産家減税という「二つの聖域」にこそ大胆にメスを入れるべきです。

 ところが、菅内閣は「新成長戦略」で、国と地方の法人課税をあわせた法人実効税率(現行約40%)を「主要国並みに引き下げる」ことを目標に掲げています。直嶋正行経済産業相は、「25〜30%へ引き下げる」ことを主張しています。

 野田佳彦財務相は、「新規の施策のためには安定した財源をつくってもらう」(20日の記者会見)と述べています。ここには、増税をして財源を確保するという考え方が見え隠れします。

 「二つの聖域」にメスを入れるどころか、さらに法人税減税というのが菅内閣の方針です。法人税減税の財源づくりとしての消費税増税に道を開くことになります。





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