2010年7月28日(水)「しんぶん赤旗」

主張

概算要求基準

「政治主導」の中身が問われる


 政府が来年度予算案の概算要求基準を決めました。社会保障費などを除く経費約24兆円の一律1割削減を盛り込んでいます。

 一律削減などという自民党政権と変わりのないやり方では、巨大な既得権益となっている軍事費や、行き過ぎた大企業減税にメスを入れることは到底できません。

あざとい演出で

 概算要求基準は、1兆円を超える「元気な日本復活特別枠」や、特別枠に入れる経費に優先順位を付ける「政策コンテスト」の実施を掲げています。それを“目玉”として、菅直人首相や仙谷由人官房長官らは「政治主導」の予算編成だと胸を張っています。

 これまでの自民党政権も何度も「特別枠」をつくって、代わり映えのしない予算編成を繰り返してきました。今回の特別枠に盛り込むとしている「新成長戦略」の関連事業にも、大都市圏の空港、港湾、道路の整備や原子力発電の推進はじめ“従来型”事業が目白押しです。

 「政策コンテスト」の中身は明らかではありません。広く国民の声を聞くのであれば、米軍への「思いやり予算」や大企業・大資産家への何兆円もの減税を続けるのかどうか、財政立て直しの根幹にかかわる問題を聞くべきです。

 池田元久財務副大臣は26日の記者会見で「形の上で政治主導を見せる」ために、官邸と民主党の政策調査会に「かんでいただいた」とのべています。この正直な発言によって池田副大臣は野田佳彦財務相から厳重注意を受けたといいますが、「政治主導」はあざとい演出にすぎないことがはっきりしました。

 何より「政治主導」といっても政治の中身が国民の立場に立っていなければ意味がありません。社会保障の連続削減や庶民増税の一方で大企業・大資産家への減税、巨額の米軍再編経費の計上や労働者派遣法の規制緩和…。自公政権が、米国と財界言いなりの悪政を「政治主導」の名で強行した事実を忘れるわけにはいきません。

 参院選で菅政権が持ち出してきた「消費税率10%」は選挙の結果、予定通りには進めにくくなっています。しかし、財政方針を示した「財政運営戦略」と「中期財政フレーム」は消費税の大幅増税を前提にしています。

 他方で政府の「新成長戦略」は法人税率の大幅引き下げや研究開発減税の拡充を掲げています。消費税を増税しても大企業減税に費やされるやり方であり、財政再建を真剣に考えているとはとても思えません。

 こんな筋書きをつくったのは財界です。

「財界主導」では

 日本経団連は昨年12月と今年4月に成長戦略の提言をとりまとめ、政府に働きかけています。4月の提言は消費税増税と大企業減税をセットで打ち出しました。それを受けた政府の「新成長戦略」を、日本経団連は「財界の目指すところと一致」「大いに評価」と持ち上げています(「『新成長戦略』の早期実行を求める」、7月20日)。これでは「政治主導」ではなく「財界主導」です。

 暮らしと経済を守りながら財政を立て直していくためには、米軍「思いやり予算」など5兆円の軍事費にメスを入れ、大企業・大資産家への行き過ぎた減税を元に戻すことが避けられません。





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