2010年7月26日(月)「しんぶん赤旗」

核兵器なくせ みんなの願い

被爆伝え 行動する青年たち

広島


 今年も広島と長崎で開催される原水爆禁止世界大会。広島県では青年たちが「2010核兵器をなくそう! 広島青年実行委員会」を立ち上げ、全国から参加する青年を迎え入れる準備をしています。(伊藤悠希)


原水爆禁止世界大会へ準備

写真

(写真)折り鶴宣伝で鶴を折りメッセージを書く人々=18日、広島市中区

 ジリジリと暑い休日の昼前、実行委員会のメンバーたちは、商店街入り口で道行く人に“折り鶴を折って、平和へのメッセージを書いてほしい”とよびかける宣伝をしました。

 机を出し、折り鶴を張る手作りボードも用意。「被爆者訪問で道案内してくれる人を募集しています」とハンドマイクで訴えます。1脚の机では手狭になるほど人をよび、1時間で約90羽の折り鶴がボードに張られました。

 3人連れの高校生は「オバマ(米大統領)さんも核兵器なくすって言ってますよね。いまが大事ですよ」と話していました。

救護所の寺

 宣伝のあとに約50分バスにゆられて着いたのは山間の町。1945年8月6日に原爆が落とされたとき、150人ほど被爆者を受け入れたという長覚寺で、被爆者と住職に話を聞きました。

 当時、教師をしていた女性(87)と、当時12歳だった男性(77)の2人が、被爆者の介護をした様子を語りました。

 女性は、「亡くなる前日に会話を交わした被爆者の名前を聞かなかったことが今も悔やまれてならない」と話しました。

 男性は、亡くなった被爆者をむしろに包み、4人で担いで火葬場に運びました。

 住職(47)は、祖父が載っている新聞記事を示して、お寺が救護所となった情景を話しました。

 参加者から、「どうしても伝えてほしいことはありますか」との質問がありました。

 女性は「今も核兵器を持ったり、つくったりしている国があります。こんな悲惨なことはない。核兵器をつくらせないよう運動することが大事です」と静かに語りました。

 男性は「それぞれの人のご判断だと思います。この年になって原爆をいろんな機会にできるだけお話ししたい」と話しました。

意外な答え

 実行委員会事務局長の正人さん(21)=仮名・大学3年生=は住職にたずねました。「おじいさんやお父さんから当時の様子を何回も聞いていると思います。当時はどう思ったか、今、伝える立場になってどう思っているか教えてください」

 答えは意外なものでした。「面と向かって聞いたことはないんです。父は直接被爆ですが、その日は体調が悪くて学徒動員の仕事を休んでいた。それで、助かったといいます。それが負い目として残り、話せなかったのかなと思います」

 正人さんは、「聞いていたものだと思っていました。でも、当時のことを語る長尾さんからは、伝えたいという気持ちがひしひし感じられました。被爆体験がない自分たちがどう伝承していくかを考えるのに勉強になりました」と語りました。

 実行委員長の春美さん(19)=仮名・大学2年生=は、「自分が座った場所に被爆者が横になっていたこと、あまりの人の多さに被爆した人が立ったままトラックの荷台に乗せられてきたこと…。実際に話を聞いて、どこか遠いところで起きたことではないんだなと感じることができました」と話しました。

 友人の実行委員に誘われて実行委員会に参加するようになった男性(33)も思いを語ってくれました。

 「正直、核兵器なんて全然興味がなかった。この仲間といると楽しいから参加しました。折り鶴宣伝でも多くの人が折り鶴を折ってくれました。平和の願いはみんな持ってる。ぼくたちだけでなく、ほかの人たちとも一緒に活動を続けて、平和な世界にできればいいなと思います」

道を探して

 春美さんは5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けて核兵器廃絶を訴える一連のニューヨーク行動に参加しました。NPT再検討会議議長のリブラン・カバクチュランさんに署名が手渡されたことについて、「核兵器廃絶の思いが形になったと感じ、運動する自信になった」と話しました。

 一方で、実際に被爆経験のない自分たちが体験を伝えていくことについては、明確な答えは出ていないと言います。「原水爆禁止世界大会に参加する全国の青年たちと一緒に考えられたらと思います」


8月5日に青年分科会

 2010原水爆禁止世界大会 広島(8月4〜6日)の青年分科会「青年の広場―被爆者を訪ねて」は5日に行われます。県立体育館小アリーナで午前9時受け付け開始。グループごとに分かれて被爆者訪問をします。





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp