2010年7月26日(月)「しんぶん赤旗」

学級規模下げよ 中教審「提言」きょう提出

長年 国民が要求


 中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の初等中等教育分科会の梶田叡一分科会長は26日、公立小中学校の学級編制の標準を現行の40人から引き下げることを求める提言を、川端達夫文科相に手渡します。これを受けて文科省は、来年度予算の概算要求に教職員増を盛り込む作業に入ります。長年の国民の要求が実るかどうかの節目を迎えています。

大勢「30人に」

 中教審の提言(12日とりまとめ)は、個々の子どもに応じたきめ細かな指導の必要性、生徒指導の課題の複雑化、などをあげて、学級規模を小さくすべきだとして学級編制の標準の引き下げを求めました。「30人または35人に見直すべきとの意見が大勢」とし、小学校低学年についてはいっそうの引き下げを検討するよう求めています。

 小中学校の学級編制の標準は、1980年策定の第5次定数改善計画(80年〜91年)で40人学級が実現して以降は、国民の強い要求にもかかわらず改善されませんでした。

 代わりに、クラスを分割しての少人数指導・習熟度別指導などを導入。文科省は、「一律に学級規模を小さくするより、教科の特性に応じた少人数指導のほうが効果的」などとしていましたが、実際の理由は、自民党政権下で、80年代後半から義務教育への国庫負担が減らされ続け、学級規模縮小に必要な教職員増が果たせなかったからです。

「最低水準」に

 その結果、日本の教育条件は諸外国に比べて立ち遅れ、OECD(経済協力開発機構)諸国で最低水準となっています。1学級あたりの児童生徒数(07年)は、OECD平均が20人程度なのに対し、日本は30人前後。中学では、日本より多いのは30カ国中で韓国だけです。

 文科省の「今後の学級編制および教職員定数の改善に関する有識者ヒアリング」では、少人数学級の効果についての実証研究が報告されています。

 アメリカ・テネシー州のSTAR計画(85年)における調査研究では、22〜26人の普通学級と13〜17人の少人数学級の比較で、少人数学級に早期に在籍し、在籍期間の長い子どもほど成績向上で効果が大きかったといいます。(小川正人・放送大学教授提出資料)

山形県で効果

 山形県では、県独自の少人数学級編制導入後、学力向上の効果が見られ、不登校の出現率、欠席率が低下しています。(グラフ=長南博昭・山形県教育委員会委員長提出資料)

 小川教授は、30人学級を小中学校の全学年で一気に実施するには、約11万人の教員増が必要で、国と地方合わせて7300億円、35人学級の場合は約4万6000人増、3100億円が必要と試算しています。

 長年、教育条件整備の運動にかかわってきた三輪定宣・千葉大名誉教授(教育行政学)は、「学級規模縮小の効果は、学術的には決着がついています。それをあえて無視してきたことで、日本は国際的にも大きく遅れてしまった」と指摘します。

 そのうえで、「遅きに失したとはいえ、ようやく世論にこたえる動きが出てきた。民主党は参院選のマニフェストでも少人数学級推進を掲げており、予算編成で本気度が問われます」と今後を注視しています。(西沢亨子)

グラフ

 学級編制の標準 国が定める1学級あたりの児童・生徒の人数の上限。40人が標準の場合は、40人までは1学級、41人になれば2学級になります。これにもとづいて教職員定数が決まり、定数分の人件費の3分の1が国庫負担されます。





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp