2010年7月21日(水)「しんぶん赤旗」

主張

概算要求基準骨子

こんなやり方に展望はない


 政府は来年度予算案の概算要求基準の「骨子」を決めました。数年後の消費税増税をあてにした「財政運営戦略」と「中期財政フレーム」に基づいて、来年度予算案の大枠を示す概算要求基準を策定するための指針です。

 「骨子」は国債費を除く一般会計の歳出を今年度の当初予算並みの71兆円と設定し、これまでの予算の組み替えを各閣僚に求めています。野田佳彦財務相らは社会保障の自然増を除く政策的経費について、一律で1割の削減を求める方針だといいます。

単なる帳尻合わせでは

 財務相の方針は帳尻合わせにすぎず、数字合わせで国民の暮らしを犠牲にしてきた自民党政権のやり方と違いがありません。暮らしと経済をどう立て直し、その中でどう財政を運営していくのか、まともな方針もなく一律に削減するというのは乱暴極まりないやり方です。何より数字の帳尻合わせでは、財界やアメリカなどの強力な既得権益がからんだ軍事費や東京外環道など、巨大な無駄遣いにメスを入れることはできません。

 一律削減から社会保障の自然増を除くのは当然ですが、社会保障は自公政権による毎年2200億円もの抑制路線によって、いっそう弱体化されています。暮らしを立て直すためには、その「傷跡」の修復が不可欠です。高齢者差別の後期高齢者医療制度を即時廃止し、高すぎる医療の窓口負担や国保料を引き下げ、介護保険の国庫負担を増やすなど社会保障の再建に踏み切るべきです。

 概算要求基準は歳出面の枠組みを示していますが、歳入面でも、「中期財政フレーム」に盛り込んだ国債発行を44兆円に抑える方針が破たんしています。内閣府の試算でも、現状では5兆円足りないとしています。

 「財政運営戦略」と「中期財政フレーム」は、暮らしと経済の立て直しの面でも財政運営の面でも、早くも最初の予算編成でゆきづまりが目に見えています。

 経済と財政の関係を無視して帳尻合わせをやっても、暮らしと経済を壊してしまったら税収が減って財政赤字も増やしてしまいます。それは、実際に税収減で大赤字を生んだ1997年の消費税増税の経験でも明らかです。消費税の大幅な増税で、同じことをさらに過酷な形で繰り返そうとしている財務省流の帳尻合わせは「百害あって一利なし」です。

行き過ぎた減税の是正

 日本経済は今回の経済危機のはるか以前から、大企業が過去最高益を更新しても国民の所得は減り、内需が停滞して国全体の成長が止まったままという異常な状況に陥っています。大企業は正社員を非正規に置き換え、リストラと賃下げ、下請け単価の買いたたきで国民の所得を吸い上げて過剰な貯蓄をため込み、それはいまや229兆円に及びます。

 その上、大企業・大資産家には、法人税率や所得税・相続税最高税率の引き下げ、証券優遇税制などで減税の大盤振る舞いが続けられてきました。

 暮らしと経済を立て直しながら財政を改善していくためには、大企業が富を独占するシステムを転換し、軍事費や大型公共事業の無駄遣いを改めると同時に大企業・大資産家への行き過ぎた減税を是正することが求められます。





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