2010年7月12日(月)「しんぶん赤旗」

悩みに付け込む霊感商法

統一協会の摘発続く

07年11月以降 12件逮捕者39人


 統一協会(世界基督教統一神霊協会)の霊感商法に対する刑事摘発が続いています。東京・町田署が今月、特定商取引法(特商法)違反で同協会町田教会の女性信者(31)を逮捕。被害者の夫の病気に付け入るという相変わらずの手口でした。


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(写真)正体隠しの勧誘(左)と「証(あかし)伝道」の使い分け

 被害者は50代の主婦Aさん。2008年8月、町田駅前を歩いているときでした。夫が1年前にアスベストによる中皮腫(がん)で手術。2日前に再発を告げられ悲嘆の底にいました。

「人生の転換期」

 そんな彼女に「人生の転換期だ」と声をかけたのが女性信者。Aさんの悲しみと不安を聞き出し、「先祖の協助で病気もよくなる。鑑定してあげる」と、同市内の「ポラリス」に誘いました。「店舗」と呼ばれる統一協会の末端組織です。

 「風水鑑定」を受け、「家族運が悪い。念珠で家族の輪がつながる」と言われて40万円の数珠を買ったのが被害の始まりでした。「井田先生」なる女性(町田教会婦人部長)らも加わって「家系図鑑定」などを繰り返し、「御主人の病気は先祖の罪のため。罪の清算に400万円の献財を」「このままでは先祖の悪因縁が長男にまで引き継がれる」「韓国の清平で解怨するしかない。それには300万円」…。

 夫が死去するまでの8カ月間に、「がんに効く」人参液80万円、つぼ90万円や献金で支出額は約790万円。この間信者たちは、夫を助けたい一心のAさんに、「財産を明かせば救われる」と資産を語らせ、「人に話したりインターネットを検索すると効果がなくなる」と口止めまでしていたといいます。

 Aさんと同じ08年夏、横浜市の主婦も同じ被害に遭っています。家族の悩みを抱える主婦に町田市の「ポラリス」を勧めたのは横浜駅前の洋品店員。「風水や家系図鑑定で悩みは解決する」

 「井田先生」などが登場し「色情の家系。いずれあなたの息子にも」と不安をあおり、預金額(400万円)の半分を献金するよう迫り、鑑定料や水晶代込みで270万円出させました。

正体隠し再開へ

 同じ場所で同時進行した事件。全国霊感商法対策弁護士連絡会の山口広弁護士はこれを「顕著な組織性」と指摘。「信者の違法行為で利得を得ているのが統一協会。特商法だけでなく詐欺罪で立件すべきだ」と言います。

 07年11月の沖縄県以降、刑事摘発はこれで12件で逮捕者39人。大半が略式起訴の罰金ですが、東京では霊感商法で初の懲役判決も出ています。

 統一協会は「信者個人の行為で宗教法人とは関係ない」と主張する一方で、正体を隠した街頭勧誘の「自粛」を信者に促す文書を公開。一部地域では統一協会の名を載せたチラシを配る「証(あかし)伝道」を始めましたが、これは表向きの行為のようです。

 多くの地域ではいまも、統一協会名を隠したまま「健康講座」「気功体操」などでの勧誘活動を展開。全国弁連の大神周一弁護士は「証伝道では効率が悪く集金ノルマを果たせないため、一部では正体隠しの勧誘をしており、いずれ正体隠しを再開することになる」とみています。





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