2010年6月29日(火)「しんぶん赤旗」
G20首脳宣言
「出口戦略」一致せず
2008年の米国発の金融危機発生後に始まったG20サミットは、今回が4回目。中国やインド、ブラジルなどの新興国が参加し、昨年9月の前回会合で「国際経済協力に関する第1の場」と位置づけられました。
今回の課題の一つは、世界経済危機への対応策である巨額の財政出動や金融緩和政策を平時に戻す「出口戦略」をどう打ち出すのかでした。
首脳宣言には2013年までに先進国が財政赤字を半減する目標が盛り込まれました。しかし会合では、財政再建の重要性を指摘しつつも、「成長に配慮した財政健全化が重要だ」という異論が各国から続出。宣言では一致した方向性を打ち出せないまま、各国の状況に即した実施が強調されました。
日本の菅直人首相は「財政運営戦略」をサミットで説明し、首脳宣言に「歓迎」の文言を盛り込ませました。
しかし、財政健全化が必要だとしても、財政赤字の原因が何にあり、健全化の負担を誰が担うのかが大問題です。欧州諸国が進めてきた財政再建策には、福祉の切り下げや公務員削減なども含まれており、国民は強く反発しています。
国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事も「財政赤字半減化についての議論は問題を簡略化しすぎている。私の関心は、各国が正しい方法で実行することだ」と注文をつけました。
また巨額の財政赤字に陥った国までもうけの対象にする投機マネーにどう規制をかけるのかも、G20で問われた焦点でした。ギリシャ危機を発端にした世界的な金融不安の背景には、こうした投機マネーの暗躍が指摘されていたからです。
しかし、この面でも欧州諸国が求めた銀行税や国際金融取引税の導入について合意はなりませんでした。
こうした金融規制強化に消極的だったのが議長国カナダや日本でした。会合初日から菅首相は「性急な実施が景気の低迷を招かないようにする必要がある」と述べ、規制強化を求める各国に冷や水を浴びせました。(トロント=田中一郎)

