2010年6月23日(水)「しんぶん赤旗」

日本記者クラブ主催「9党党首に聞く」

志位委員長の発言


 日本記者クラブ主催で22日開催された「9党党首に聞く」で、日本共産党の志位和夫委員長が行った発言を紹介します。ほかに菅直人・民主党代表(首相)、谷垣禎一・自民党総裁、山口那津男・公明党代表、福島瑞穂・社民党党首、亀井静香・国民新党代表、渡辺喜美・みんなの党代表、舛添要一・新党改革代表、平沼赳夫・たちあがれ日本代表が出席しました。


有権者に何を訴えるか

消費税増税の目的は、大企業減税の財源づくり
普天間基地の無条件撤去を求め、米国と本腰の交渉を

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(写真)発言する志位和夫委員長=22日、日本記者クラブ

 冒頭、各党党首が今回の参院選で有権者に一番訴えたいことを3分間で表明しました。

 菅氏は「この20年にわたる日本の閉塞(へいそく)状態を打ち破る」などとのべるだけで消費税にはふれず、谷垣氏は「誇りと自信に満ちた国づくり」とのべ、消費税増税を主張。山口氏も「消費税を含めた税制の抜本改革が必要」などとのべました。

 志位氏は、次のようにのべました。

 志位 消費税大増税問題が、今度の選挙の大争点になっています。

 民主党と自民党がそろって「消費税10%」を公約にしたことに、「とても暮らしが立ちゆかない」「商売が続けられない」、との大きな不安と怒りが広がっています。

 税率10%になりますと、4人家族でしたら年間平均16万円の負担増です。そもそも消費税は、所得の少ない人に重くのしかかり、大企業は1円も払わない、最悪の不公平税制です。

 くわえて、とりわけ重大な問題は、今度の消費税増税は、大企業の法人税の引き下げとセットで打ち出されていることです。

 これは、もともと財界が言い出したことです。日本経団連は今年4月に、「一刻も早く消費税を引き上げろ」「法人税を引き下げろ」という方針書を出しました。今度の選挙で民主党と自民党が、そろって「消費税10%」と法人税の減税をセットで打ち出しているのは、財界の方針書にこたえた動きだといわなければなりません。

 財界は、法人税の実効税率を40%から25%に下げろ、と言っています。これは消費税率にすると4%分になります。消費税増税の目的は財政再建でも社会保障財源でもありません。大企業減税の財源づくりにこそ本当の目的があります。こういうやり方は庶民の家計を壊し、消費を冷やし、景気をますます悪化させるだけです。

 暮らしを支える、社会保障を支える財源は、年間5兆円の軍事費にメスを入れ、行き過ぎた大企業・大資産家の減税を見直せばつくれます。

 大企業減税のための消費税増税は絶対反対、この声をどうか日本共産党にお寄せください。

 沖縄・普天間基地の問題も重大な争点です。

 民主党政権が、アメリカいいなりに、名護市辺野古の美しい海をこわして基地をつくる「日米合意」を交わしたことは、県民の総意を踏みにじるものであり、絶対に許せません。

 私は「日米合意」を白紙撤回し、普天間基地の無条件撤去を求めて、アメリカと本腰をいれた交渉をすることを、政府に強く求めます。

 私は、5月上旬にアメリカを訪問し、アメリカ政府と会談をし、沖縄県民の総意がどこにあるのかを伝え、普天間問題の解決の道は無条件撤去しかない、ということをきっぱり先方に伝えてまいりました。

 相手がアメリカでも、財界でも、国民の立場で堂々とモノが言える党、日本共産党をどうか、大きく躍進させてください。よろしくお願いします。

志位委員長 一問一答から

初訪米―共産党のアメリカ観は?

沖縄・米軍基地問題で真っ向から対立したが、意見交換はつづける

 続いて、記者クラブ代表が各党党首に質疑を行いました。志位氏が冒頭発言で紹介した初のアメリカ訪問に対し「アメリカ観が変わった、アメリカファンになったのではないか、共産党らしくないという感じがするのですが」との質問が出され、志位氏は次のように答えました。

 志位 私たちはいまのアメリカについて、たとえば核兵器の問題について言いますと、オバマ大統領が、昨年チェコ・プラハで、「『核兵器のない世界』をめざす」と(演説しました)。これは前向きの方向で、こういう方向が出てきたときには、私たちは大局的に協力できると考えています。

 しかし私は、5月に訪米して、おもにワシントンで国務省と話し合った件は、沖縄の基地の問題、米軍基地の問題でした。この問題では真っ向から意見が対立するわけです。

 私たちは、沖縄県民は絶対に普天間基地の「県内移設」は認めない、ですから解決の方法は普天間基地の無条件撤去しかない、ほかに解決の方法はないのだとはっきり先方に伝えました。

 そうすると先方は、そうはいっても「海兵隊は抑止力」と話してくる。(私は)そんなことはない、海兵隊が行っているのはイラクやアフガンで抑止力じゃないという、厳しい意見の対立がありました。

 言うべきことはきちんと言う。ただ、最後に、米側から「立場は違っても、意見交換は有益です。今後も続けましょう」という話がありまして、これをやっていきましょうということになりました。

 私たちは、アメリカに対して、頭ごなしに全部悪いとは言わないけれど、きちんと基地の問題、沖縄の問題、国民の声を代弁して堂々と言ってきている政党だということを言いたいと思います。

消費税増税問題にどうのぞむか?

 消費税増税の議論に移り、質問者からは「菅さんのおかげで参院選の最大の争点として消費税の問題が浮上してきている」との発言がでました。

 菅氏は改めて自民党が提案している消費税率10%を「一つの参考」に超党派協議を行っていく立場を表明。谷垣氏も「協議を超党派でやろうというのはもともと私たちが言い出したこと。受けて立とうという気持ちを持っている」と応じるなど、消費税増税の“大連立”の動きが浮き彫りになりました。「将来にわたって消費税引き上げはいっさい必要ない考えなのか」と問われ、志位氏は次のようにのべました。

消費税増税の「大連合」にきびしい審判を

 志位 私たちは、そういう考えです。将来はやはり消費税廃止をめざすというのが私たちの考えです。

 与野党協議ですが、民主党のマニフェストをみますと、「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」と書かれているわけで、消費税増税を目的としたそのための協議であることは明瞭(めいりょう)だと思います。

 “赤信号みんなでわたれば怖くない”とばかりに、消費税大増税の「大連合」をつくっていこうと。そしていったん、この「超党派」の協議なるもので結論が出たら、国会でのまともな審議なしに右から左に通してしまおうと。私たちはこういうものには参加しませんし、こういうやり方そのものがだめだという審判を下すことが大事だと思っています。

法人税減税で9兆円の税収減、消費税増税はその財源に

 志位 もう一つ、先ほど話があったので言いたいのですが、(私は)今回、政府がやろうとしているやり方では、財政再建にもならないし、社会保障の財源もつくれないと言ったのです。というのは、このマニフェストをみても、「強い財政」の目玉になっているのは消費税の増税、「強い経済」の目玉になっているのは、法人税の減税なんですよ。法人税(実効税率)を25%に下げたら、9兆円穴があくわけですよ。消費税を5%上げると11兆円の財源があらたに生まれる。ほとんど法人税の減税の財源になってしまうわけですよ。こういうやり方では、福祉の財源もつくれないし、財政再建にもならないということを厳しく批判しているのです。

法人実効税率25%への引き下げは政府文書にも明記

 これに対し菅氏は「よく共産党のみなさんが、法人税を下げて税が少なくなるのを穴埋めするために消費税を考えているといわれますが、これはまったく間違いです」「志位さんは法人税を15%下げたら9兆円穴があくといわれたが、それは平成19年(2007年)に24兆円くらい法人税があったときの計算。いまは半分だ」などとのべました。志位氏は次のように反論しました。

 志位 確かに9兆円というのは平成19年(07年)の数字です。いまは一時的にひどい過剰生産恐慌になっているわけですから、その(いまの)数字を使っているわけではありません。しかし、この問題は、先々の税制の問題を議論しているのですから、9兆円という数字は当然だと思います。

 菅さんは間違いとおっしゃるけど、例えば、経済産業省が出した「産業構造ビジョン2010」、政府が出した文書ですよ、このなかには25%(法人実効税率)という数字があるんですよ。ですからこの(法人税減税の)問題が一体になって提起されている。このことは事実の問題です。みなさんのマニフェストにも書いているわけですから。こういうやり方では決して福祉の財源はつくれないということを言いたいと思います。

普天間基地問題をどうするか?

「抑止力」の呪縛にとらわれ、菅氏は変質した

 沖縄・米軍普天間基地と米軍の「抑止力」について議論になりました。菅氏は「日米合意を守ることは私の政権の約束であり、変えるつもりはない」と表明。日米同盟について「アジア地域の一つの安定要因」として維持・発展させる立場を強調しました。

 志位氏に対し記者から「日米同盟のあり方について左右から批判をしていただきたい。まずは志位さんから。日本はアメリカに頼りすぎだ、と一貫して主張している共産党は対米独立路線をとっているが、アメリカに行ったことを踏まえて民主党に何か提言することがあるか」が問われ、次のように答えました。

 志位 菅さんも、首相になる前は、海兵隊について、「抑止力ではない」、「海兵隊は守る部隊ではない。地球の裏側まで行って攻める部隊だ」、「アメリカ国内に戻ってもらう」とおっしゃっていたんですね。「どうして立場を変えたのか」と国会で聞いたら、さだかな答えはありませんでした。「海兵隊は抑止力だ」との呪縛(じゅばく)にとらわれたところに民主党の変質があったと思います。

 海兵隊は決して「抑止力」ではない。実際に海兵隊が展開している場所はイラクやアフガンじゃないですか。普天間(基地)の海兵隊も1年のうち半分は中東に行っているわけです。日本の平和を守る「抑止力」ではない。沖縄を根城に世界に攻め込む、そういう「侵略力」というのが私たちの認識です。

 その点で菅さんはかつて真実を述べていた。ところが今は、「きわめて重要な抑止力だ」と変わったわけです。アメリカいいなり、追随の姿勢が現れているといわざるをえません。

 これをうけ記者から菅氏に対し「海兵隊の抑止力を一から見直し、共産党さんがおっしゃるようにどこからどこまで必要かという大枠の広い議論を検討する考えは」との提起が出ました。しかし菅氏は「政権の責任者となった中ではトータルの問題として米軍の存在が抑止力という機能を果たしている」と「海兵隊=抑止力」の立場を示しました。

「(日本の)法人税は高すぎる」に根拠なし

 最後に、参院選での目標議席を各党党首がパネルに書いて説明。志位氏は「“比例5 東京プラスα―多いほどよい”」と書き、こうのべました。

 志位 私たちの目標はこれです。先ほど、消費税と法人税の議論がされましたが、法人税率が高すぎるという議論に根拠はない、研究開発減税などいろいろな優遇税制(がある)、そして社会保険料は(欧州に比べて)軽いですから、決して高すぎるというのは根拠がないということを一言いっておきたいと思います。





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