2010年6月23日(水)「しんぶん赤旗」

「地域主権」 戦略大綱を閣議決定

最低基準撤廃、道州制も射程


 菅内閣は22日、国と地方のあり方の抜本的見直しを盛り込んだ「地域主権戦略大綱」を閣議決定しました。

 「義務付け・枠付けの見直し」の名で、国民生活を守るために定めた最低基準の緩和・撤廃を進めることを打ち出しました。すでに決めた約370項目に続いて、さらに見直しを行うとしています。

 地方への国の財源保障である補助負担金をなくし、使途を定めない「一括交付金」を2011年度から導入。社会保障や義務教育関係も一括交付金の対象とした上で、「全国画一的な保険・現金給付」などは対象外としています。

 ハローワークなど国の出先機関については「原則廃止」し、「地方移譲」をすすめると提示。年内に具体的な移譲計画を定めます。

 地方交付税の「総額の確保」を盛り込んだものの、「地方消費税の充実」を打ち出し、この分野でも消費税増税路線を進める姿勢です。

 地方自治体は「自主的・総合的に行政を担う」とする一方、「道州制も射程に入れる」として、道州制の導入と市町村のいっそうの大合併・大再編をすすめていく方向です。

 地方議会について「長と対立した場合の解決手段」が必要だとして、地方議会の形がい化をねらう「地方政府基本法」の制定を打ち出しています。


解説

新たな地方の切り捨て

 閣議決定された「地域主権戦略大綱」は、自公政権がすすめてきた地方切り捨てと住民自治破壊を新たな装いですすめるものです。

 大綱は、国は「国家としての存立にかかわる事務を重点的に担う」とする一方、住民サービスは自治体が「自主・自立」して担うよう求めています。国の役割を防衛などに限定し、あとは自治体任せにする方向であり、住民に「自己責任」を求める姿勢です。

 しかし、国と自治体は、憲法に基づいてすべての国民にナショナルミニマム(国民の生活保障)を実現する責任がともにあります。大綱は、「地域主権改革を進めれば自治体間でサービスに差異が生じる」とのべていますが、国の責任を投げ捨て、格差を広げることは許されません。

 国の責任後退は、福祉などの最低基準を定めた「義務付け・枠付けの見直し」や、地方向け補助金の「一括交付金」化で顕著です。

 民主党は地方向け補助金を「ひも付き補助金」と呼びますが、その圧倒的部分は、法律で国に負担を義務付けた福祉・教育関係費です。「全国画一的な保険・現金給付」などは対象外にするとしていますが、国の財源保障が後退することは明らかです。福祉や教育などの最低水準を確保することも難しくなり、地域格差は広がらざるをえません。

 さらに大綱では、自治体が「自主的・総合的に行政を実施する」よう求めています。これは自治体の規模拡大を迫るもので、市町村の大再編と、地方自治破壊の「道州制」につながるものです。大綱でも「道州制を射程に」とそのねらいをあけすけに示しています。

 昨年の総選挙で国民は地方切り捨ての「構造改革」路線にノーの審判を下しましたが、これでは、「構造改革」路線への逆戻りといわなければなりません。「地域主権」というなら、福祉・教育に対する国の責任を後退させず、地方財源を保障すること、道州制・市町村の大再編でなく、住民に身近な市町村の強化と住民自治の発展こそ求められます。(深山直人)





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