2010年6月16日(水)「しんぶん赤旗」

貧困ビジネス「やすらぎの里」

生活保護費ピンハネ

年6200万円利益

決算資料を本紙が入手


 貧困ビジネスと批判されている「特定非営利活動法人(NPO)やすらぎの里」(本部・東京都中野区)が2008年度決算で、施設入所者の生活保護費を元手に、年間6218万円の利益(税引き前当期純利益)をあげていることがわかりました。本紙が、さいたま市に対して行った行政情報公開請求で入手した決算資料によるものです。(今田真人)


 同法人は、東京都と埼玉県の合計三つの「無料低額宿泊所」を経営(08年度当時)。定員は、東京都北区の東十条寮が68人、さいたま市北区の吉野寮が88人、同市大宮区の天沼寮が38人で、合計194人。

 利益の元になる売上高は08年度が2億7472万円で、会費収入40万円を除くと、すべてが入所者から徴収する生活保護費収入となっています。

 この売上高から、入所者のための食料購入費や、水道光熱費、地代家賃、職員の人件費などの必要経費を差し引いて、税引き前当期純利益が算出されています。

劣悪環境

 年間6218万円の利益を定員194人で割ると32万円。これを12カ月で割った約2・7万円が単純計算で、生活保護受給者1人当たりの月のピンハネ額になります。

 吉野寮から最近逃げ出した元入所者の男性によると、劣悪な食事や住環境にもかかわらず、月約13万円の生活保護費から「施設利用費」として毎月10万5000円(部屋代・食費・水道光熱費などの合計)が同法人に徴収されています。この10万5000円の徴収額のうち、2・7万円が寮運営の必要経費ではない「利益」に回されたことになります。

 また、同決算資料では「生活支援金」という名目で5100万円の意味不明の多額の経費も計上されています。さいたま市の担当者は「どんな内容か、よくわからない。法人に問い合わせ中だが、まだ返事がない」(福祉総務課)という支出です。

回答拒否

 生活保護費は本来、国民の「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を保障するためのもの(生活保護法第1条)。「最低限度」のはずの保護費を元に、さらに多額の「利益」を計上すること自体が、こうした「貧困ビジネス」の違法性を浮き彫りにしています。

 同法人の本部は、本紙の問い合わせに「担当者はいない。(担当者が)だれかも答えられない」と、一方的に電話を切るなど、取材を拒否しています。





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