2010年6月6日(日)「しんぶん赤旗」

主張

遺骨返還

植民地支配の反省 行動で示せ


 戦争中、日本政府によって朝鮮半島から強制動員された韓国・朝鮮人労働者の遺骨を返還する政府のとりくみが遅れていることに、批判の声が強まっています。

 軍人・軍属として動員された人たちの遺骨は5月19日に219体分が返還されましたが、労働者の遺骨返還作業は一向に進んでいません。遺骨がどこにあり、どう保管されているのかさえ十分に解明されていないのが実情です。政府は、返還作業が遅れている原因を明らかにし、遺骨の早期返還に全力をあげる必要があります。

関与した企業の責任

 日本政府は戦争中、韓国・朝鮮人を軍人・軍属として徴兵・徴用するとともに、多くの人たちを労働者として強制動員しました。その数は100万人台ともいわれます。労働者は民間企業に配属され、過酷な労働を強制され、亡くなった人も少なくありません。犠牲になった人々の遺骨を返還するのは強制動員した政府の義務であり、誠実な履行が不可欠です。

 韓国では日本政府による強制動員の被害者遺族などへの支援措置を2012年まで延長しました。遺族がこの支援金を受けるには日本からの遺骨返還や情報の提供が条件となります。日本政府が遺骨を返還し、遺骨情報を韓国側に提供することが遺族支援にとっても重要です。

 にもかかわらず日本政府の遺骨返還作業は進んでいません。それは政府が表明した植民地支配の反省にふさわしい政治的意思と構えがないからです。とりわけ問題なのは、「国策」に協力し、過酷な労働を強制した当時の企業責任を問う姿勢がきわめて弱いことです。

 強制労働に関与した企業は数千社ともいわれます。ところが2005年の遺骨実態調査で政府が調査協力を求めた企業は120社程度です。遺骨調査は宗教団体や自治体の協力だけでは進めることはできません。強制労働に関与した企業からの情報が不可欠です。政府は全力をあげて当時の企業を調査し、遺骨の扱いなどの情報提供を求めるべきです。「時間がたっており調査は困難」というのは企業責任をただす立場を投げ捨てる言い訳にすぎません。

 企業を特定するうえでとくに重要なのが、厚生労働省が保管している厚生年金名簿の公表です。当時の企業は、配属された韓国・朝鮮人労働者の名前や賃金の額などをざら紙に書いて政府に提出しています。それは厚生労働省にそのまま残っています。厚生年金名簿を公表すれば企業名も特定できます。厚生年金名簿を含む関連情報をすべて公表してこそ、遺骨返還の促進に道を開くことができるのは明らかです。政府は「個人情報保護」を理由にして公表を拒むべきではありません。

真摯な態度をもって

 ことしは日本が武力を突きつけて韓国に押し付けた「韓国併合」から100周年にあたります。朝鮮半島を軍事支配するなかで強要した「韓国併合条約」は不法であり、正当化できない誤りです。「韓国併合」を正当化する立場では韓国に約束した遺骨返還も前に進めることはできません。植民地支配への真摯(しんし)な反省が不可欠です。

 政府は、植民地支配への反省をことばだけにせず、行動で示すためにも、遺骨返還の要求に正面から応えるべきです。





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