2010年6月2日(水)「しんぶん赤旗」

経産省 「産業構造ビジョン」

“法人税率 大幅に下げよ”

「派遣」規制強化に反対


 経済産業省は1日、今後の産業政策の基本を示す「産業構造ビジョン」を発表しました。法人税の大幅な引き下げや非正規雇用に対する規制反対など大企業中心の成長戦略となっています。

 「ビジョン」は、(1)インフラ(社会基盤)の輸出(2)エネルギー(3)文化(4)医療・介護・子育てサービス(5)先端産業―の戦略5分野の育成を掲げました。5分野を「国際競争力」のある産業に育てることで2020年までに149兆円の生産を増やし、258万人の雇用を創出するといいます。

 「ビジョン」は「国際競争力」の名のもとに随所で法人税減税を主張。現在約40%の実効税率を来年度から5%引き下げ、将来25〜30%にすることを打ち出しました。企業の「立地競争力」強化を最優先する立場から「企業と労働者のどちらを支援すべきかといった議論は非生産的」と言い切りました。法人税を下げれば経済が成長し、税収が増えるとの議論も展開しています。

 雇用に関しては、現在国会に提出されている不十分な労働者派遣法改定案を挙げ、「労働規制強化」に対し「国内雇用の喪失につながるおそれがある」と反対。大企業の立場を代弁しています。

 戦略5分野の中には危険な原子力発電所の輸出や軍需とつながる航空・宇宙産業の振興も含まれています。子育てサービスの供給拡大のために業務コストの圧縮も指摘。

 「ビジョン」は、経済産業相の諮問機関である産業構造審議会の産業競争力部会の論議をまとめたもの。トヨタ、東芝、東京電力の会長、副会長ら大企業の代表が同部会の中心メンバーです。


解説

多国籍企業にてこ入れ

 経済産業省の「産業構造ビジョン」は、日本の“売り物”になる産業を育成し、海外に進出することで経済成長を図ろうという戦略です。財界の意を受けて、自民・公明政権時代の大企業優遇策をいっそう拡大する内容です。法人税減税については、前政権以上に露骨な要求を打ち出しました。

 過去、政府が発表した経済成長戦略にも法人税減税の主張は盛り込まれましたが、今回は将来25〜30%まで下げると数値目標まで設定しました。「ビジョン」は触れていませんが、過去20年間の法人税減税は国民から取った消費税でまかなわれてきました。

 「ビジョン」は、日本の産業の「行き詰まり」を直視するよう主張しますが、本当の原因は何なのか。日本経済は1990年代末から成長が止まりましたが、その中でも大企業はもうけを増やし続け、内部留保は97年から2007年の間に1・6倍に増えました。その一方、雇用者報酬は97年から09年の間に10%落ち込みました。大企業が栄えて国民が貧しくなるゆがんだ構造を正す必要があります。

 しかし、ビジョンは内需については「国内市場に頼ることで企業が成長し、雇用を生み出せる時代は終焉(しゅうえん)を迎えている」と切り捨てています。(山田俊英)





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