2010年5月31日(月)「しんぶん赤旗」

主張

御手洗氏の「心残り」

小泉税制の復活は許せない


 日本経団連の会長を27日に退任した御手洗冨士夫・キヤノン会長が、「心残りは税財政改革」だとのべ、新体制に引き継いでいます。

 “大企業の税金は高すぎるから大幅減税を”“社会保障など必要な財源は消費税増税で国民が負担を分かち合うべきだ”―。これが日本経団連の年来の主張です。

 御手洗氏は会長当時、もっとあからさまに、法人税減税の財源は「消費税の引き上げで対応する」と言っていました。

鳩山政権が流れを戻す

 御手洗氏が経団連会長に就任したのは2006年、小泉内閣のときでした。財界が司令塔となって政府に法人税減税と消費税増税の計画を作らせ、11年度までに消費税増税の法案を成立させるレールを敷くところまで行きました。

 しかし、07年の参院選に続いて09年の衆院選でも国民は自公政権に厳しい審判を下し、財界仕込みのシナリオの実行を簡単には許さない状況を作り出しました。御手洗氏に「心残り」と言わせる変化を生んだのは、財界の横暴に対する国民の批判とたたかいです。

 この流れを鳩山政権が元に戻そうとしています。

 鳩山政権は「財政運営戦略」や新たな「成長戦略」など、今後の経済・財政政策を6月中にとりまとめる方針です。その議論の中で、経済・財政運営のかなめとして法人税減税と消費税増税が浮かび上がっています。

 直嶋正行経済産業相は財界と異口同音に「法人税は高すぎる」として、「日本の経済成長を考えると…大幅に減税する必要がある」とのべています。経産相の諮問機関で議論し、「成長戦略」の目玉として法人税減税を打ち出す方針です。原案では地方税を含む法人税率を当面5%、ゆくゆくは10〜15%引き下げるとしています。

 日本の大企業は、この10年で90兆円近くもため込み金(内部留保)を積み上げ、過剰貯蓄になっています。大企業減税は必要もないし、意味もありません。

 日本の法人税の表面的な税率はアメリカと同水準です。しかも自動車や電機、製薬などの大企業は、研究開発減税によって30%の国の法人税率が実際には21%程度まで圧縮されています。これは中小企業向けの軽減税率並みです。そのうえ日本の社会保険料の事業主負担は欧州諸国の2分の1、3分の1にすぎません。日本の大企業には、減税ではなく税・社会保険料の応分の負担こそ求めるべきです。

 菅直人財務相は、消費税を増税しても、財政出動で仕事や雇用が生まれれば景気にプラスだと力説しています。

 菅氏は増税が「心臓ペースメーカー」の役割を果たして経済の循環を良くすると言っています。しかし、消費税増税は弱った家計をさらに痛めつける「毒薬」です。家計消費を破壊する暴挙に出れば、内需という経済循環の心臓部そのものが悪化します。

景気に大きなマイナス

 消費税増税でつくった財源が大企業減税に回るとすれば、財源の使い道を含めて考えても景気には大きなマイナスです。

 鳩山政権は御手洗氏の「心残り」を晴らす役割を買って出ようとしています。「大企業に減税、庶民に増税」という逆立ちした小泉「税制改革」の復活を許すことはできません。





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