2010年5月27日(木)「しんぶん赤旗」

初の訪米、参院選について

BSフジ 志位委員長 大いに語る


 日本共産党の志位和夫委員長は、25日放送のBSフジ番組「PRIME NEWS(プライムニュース)」に生出演し、党訪米団の活動や参院選の争点などについて縦横に語りました。聞き手は、フジテレビ報道局政治部の反町理氏と元同テレビアナウンサーの八木亜希子氏、解説役は若松誠フジテレビ解説委員長です。


普天間問題―「あなたが総理大臣ならどうしますか」

 番組は冒頭、「共産党の志位委員長がNPT(核不拡散条約)再検討会議などに参加するためニューヨークへ飛び立った」と訪米の様子をVTRで詳しく紹介。視聴者からは「志位委員長、あなたが総理なら基地問題をどうしますか」(広島県・70歳代の女性)とのメールが寄せられ、沖縄・米軍普天間基地問題をどう解決するかが焦点になりました。

 志位 沖縄県民の総意はもうはっきり出ていると思うんですよ。

 私も参加しましたけど、4月25日に9万人が参加する県民大会が開かれました。ここには県知事、そして(県内)41の市町村長全員(代理も含む)が出席された。そして普天間基地は閉鎖・撤去する、県内「移設」はだめだ、これが島ぐるみの意思になったわけです。(沖縄では)自民党から共産党まで超党派でこの意思は固まっているわけです。ですから、県内に「移設」する、新しい基地をつくるというのは、絶対にこれは実現することはできないし、させてはならないことだと思います。

 もともとこの普天間基地問題というのは、世界一危険な基地を撤去してほしいというのが県民の願いでした。それが、普天間を返す代わりに別のところにつくりますよ、という「移設」論になってしまったために、14年も基地が動かなかったわけですね。だから「移設」条件付きではない、無条件の撤去を正面から求めて、米側と交渉するということが、日本政府に求められていると思います。

海兵隊は「抑止力」―この言葉はもはや通用しない

 反町 「抑止力」っていう言葉があるじゃないですか。(党訪米団の要請で)アメリカの国務省からそういう言葉も出たかと思いますけれど、「抑止力」、海兵隊の存在意義はどうみてらっしゃるんですか。

 志位 (国務省との会談でも)米側は、海兵隊の「抑止力」ということをいうわけですね。私はその場でも米側に反論したのですが、「抑止力」というけれども、まず沖縄県民からすると、「抑止力」という3文字で基地をこれ以上押し付けることは、もはや県民には通用しない、説得力のない言葉になっているということを言いました。

 それからもう一つ、「抑止力」っていうけれども、実際に沖縄の海兵隊が展開している場所はどこか。アフガニスタンであり、イラクではないか。そして普天間基地には(海兵隊の)ヘリコプターの部隊がいますが、実際に普天間にいるのは1年のうち半分です。半分はアフガンやイラクにいっているんですね。「日本の平和を守るため」というこの理屈は、実際の(海兵隊の)行動をみても、説得力はないと話しました。

 反町 もともと海兵隊は非常に機動性の高い部隊です。そのときそのときのホットポイントとか重要拠点にぽーんといくというのは当然だと思いますが。

 志位 ワインバーガー元米国防長官は、「沖縄の海兵隊には日本防衛の任務は与えていません」といっている。チェイニー元国防長官も、「沖縄を拠点にして戦力を世界に投射する部隊なんだ」と。要するに、沖縄を拠点にして世界に展開する部隊なんですよ。現に展開しているのは中東ですよ。しかもイラク戦争のように、国際的にも違法な戦争に投入される。こういう部隊なんですね。ですから私は、「抑止力」の3文字で県民に押し付けるのはもう通用しないんだと話しました。

 そしてもう一つ、米国に話したのは、日米安保についてアメリカ政府と日本共産党の立場はもちろん違う。「抑止力」についても考え方は違う。しかし、事実をきちんと直視する必要がある。沖縄県民は、県内「移設」は絶対にノーだと、これはもう「ポイント・オブ・ノー・リターン」だといったんです。つまり絶対に引き戻すことがない限界点を超えていると。県民のみなさんが県内「移設」を認めることは絶対にありえない。これは解決する展望のない方針だ。ここはもっと歴史的に大局的な判断が必要な場面ですということをいったんです。

 反町 それだとアメリカ側も海兵隊の基地を譲れないという話にならないんですか。そこで次善の策として一番危険な普天間をとりあえず返還して、代わりのものをどこかに置こうというのが今回の話だったという理解では。

 志位 (沖縄県名護市の)辺野古にだって人が住んでいる。危険なことは変わらないんですね。世界一危険だという基地がどこに移ったってやっぱり危険なんですよ。ですから県民のみなさんは、宜野湾の市長の伊波洋一さんも反対しているし、名護の市長の稲嶺進さんも反対している。両方が反対しているわけですよ。ですからこの道では絶対に動かないと思うんですね。

北東アジアをどうする―政治的・外交的な解決こそ

 八木 県民のみなさんにとって「抑止力」という言葉が効かないっていうのはとてもよくわかりますが、いま朝鮮半島が緊迫した状況の中で、日本全体における抑止力についてはどうお考えですか。

 志位 たとえば朝鮮半島の問題をどうするか。(韓国哨戒艦沈没事件で)韓国政府は、証拠を示して断定したわけです。私たちは談話を出しまして、魚雷の攻撃は無法なことで厳しく非難するということを表明しました。同時に、解決の方法は決して軍事的対立や悪循環の方向に行ってはいけない。やはり平和的・外交的な解決ということを世界が望んでいると思うんですね。韓国もそうだと思います。

 こういう問題が起こったときに、すぐ「抑止力」という言葉が出るんだけれども、「抑止力」っていう言葉は英語でいいますと「デターランス」――「脅し」という意味なんですよ。核の「抑止力」もそうですし、海兵隊の「抑止力」もそうですが、「脅し」というのはいざとなれば実際に使うことを前提にして初めて成り立つ議論なんですね。たとえば海兵隊は朝鮮半島に対する「抑止」だとよくいいますよね。あるいは中台に対する「抑止」だと。ところが実際に海兵隊を朝鮮半島に出して戦争をすることがあるのか。あるいは中台に出して戦争をすることがあるのか。こんなことはどこの国も考えていないですよ。ですから「抑止力」という言葉がよくそういうふうに使われるけれども、これは現実には成り立たない議論で、言葉だけが独り歩きしている虚構だと思います。現実に使っているのはどこかといったらアフガンであり、イラクなんですよ。北東アジアの問題じゃないんですね。

 反町 ただ、北朝鮮という国は魚雷攻撃をする国だという前提に立った場合、彼らを話し合いのテーブルに引き出すために抑止力が必要だという理屈はいかがなんですか。

 志位 いまは止まっていますけれども、6カ国協議という枠組みで解決しようということでみんなでつくったわけですね。ですからどんな問題がおこっても、軍事の圧力じゃなくて、世論の圧力、政治的・外交的な努力で、いかに北朝鮮を6カ国協議に戻らせるかということをやるのが大事ではないでしょうか。

アメリカ訪問について―核兵器、基地問題で働きかけ

 番組では、党訪米団が会談したNPT再検討会議関係者や米政府・議会関係者との日程がフリップで紹介され、それを示しながら志位氏は訪米の目的と内容について詳しく語りました。

 志位 二つ目的を持っていきました。

 ニューヨークでの活動は、NPT再検討会議にオブザーバーという立場で出席し、被爆国の政党として「核兵器のない世界」に向けてNPT再検討会議が成功するように働きかけるということをやりました。

 もう一つはワシントンの方の活動ですが、これは米国政府、議会と会談して、とくに「日米関係のあるべき未来」、そして沖縄の基地問題についての私たちの見解、「基地のない沖縄」という願いを先方に伝える。これがもう一つの目的でした。

 「アメリカを訪問して何を得たと思いますか」(群馬県の30代の男性)の質問メールも。志位氏は、NPT再検討会議にたいする要請を詳しく紹介しました。

 志位 二つの要請をしたんです。一つは、2000年のNPT再検討会議で核兵器をもっている国が核兵器を捨てますと「明確な約束」をしているんですね。これは2005年の再検討会議で当時のブッシュ政権が抵抗して再確認すらできなかった。これを再確認するというのが成功の土台になると。もう一つの要請は、それにくわえて、「核兵器のない世界」に進むためには、核兵器廃絶のためのプロセスを検討する国際交渉を開始する必要がある。このことを要請の要の問題として出しました。

 第一点は、圧倒的多数の国が賛成です。第二点も、世界の大勢が核兵器廃絶交渉の開始に賛成ということがよくわかりました。とくにカバクチュランNPT再検討会議議長、ドゥアルテ国連上級代表・軍縮担当、シディヤウシクNPT再検討会議第1委員会(核軍縮)委員長などとも、こういう方向で立場が共通することが確認できました。

 反町 そういう提言・意見を示されることは当然すばらしいことだと思うんですけど、一方その会議ではイランの大統領が核を保有しているP5に対して非常に厳しい意見を展開する。アメリカとイランの間にさまざまな意見の言い合い、つばぜりあいがある。会議としては大きな世界的な軍縮の流れにおいてはどういう位置づけだったのでしょうか。

 志位 私たちが提起した核廃絶交渉を開始しようという流れは、世界の大勢だといえると思います。先ほどいった(会議運営の)中枢の方々はみんなそういう立場ですし、それから非同盟諸国もすべてそういう方向ですし、「新アジェンダ連合」というブラジルとかスウェーデンという国々もそういう方向です。これは世界の大勢になっている。

 ただ会議の行方はわからないんですよ。(最終日の)5月28日をみないとわからない。コンセンサス方式、全会一致方式ですから、1国でも強硬に反対すると最終合意が成り立たなくなるんですね。だから最後までわからないです。中間的に出た文書をみますと、私たちが2項目目に提起した核廃絶のための交渉を始めようという内容が盛り込まれています。ぜひそういう方向でまとまってほしいということで、こちらに帰ってきてからもカバクチュラン議長に再度の要請の書簡を出しました。しかし、その後、それに否定的な意見も出ているようです。最後までこれはわかりません。今度のNPT会議を成功させてほしいという期待は、世界でもたいへん強いものがあります。ぜひ成功させてほしいと願っています。

 若松氏は「かつて共産党さんはアメリカを帝国主義と、ずっと敵対的な強い言葉を使われていた。いま現在アメリカに対してどういうふうに思われているんですか」と質問。

 志位氏は、党訪米が実現した背景の一つに「アメリカでも反共の壁が崩れた」ことがあるとともに、「私たち自身も綱領をいまの世界にふさわしく発展させてきた」と説明。アメリカの見方については、その世界政策を分析して「帝国主義」との規定をしているが、そのアメリカであっても世界の平和の流れに押されて、部分的に前向きの動きが起こることはありうるとして、「複眼」で対応する理論的な見方を発展させたことをあげました。

 そのうえで、日米安保や「抑止力」、沖縄の基地問題をめぐって米側とは立場が違い、厳しいやりとりになるが、「立場は違っても、意見交換することは有益だとお互いに認めて、今後もやっていこうということになったのは大事です」とのべました。

参議院選挙――アメリカにも財界にもモノが言える政治を

 参院選をどうたたかうかがテーマになり、鳩山政権について志位氏は次のようにのべました。

 志位 民主党政権になって、国民は最初、期待したわけですよね。それが失望に変わり、いまでは怒りだと思います。たとえば後期高齢者医療制度をすぐ撤廃するといったものが先送りでやろうとしない。普天間問題も、県内には絶対つくらない、「県外、国外だ」といっていたものが公約違反ですよね。ですからことごとく期待が裏切られたというもとで、なぜそうなったかということがいま問われるべきだと思います。

 結局、アメリカと財界にモノが言えない政治になっている。自民党もそうだったわけですけど、民主党もまたアメリカと財界に正面切ってモノが言えない。結局、普天間の問題でも、沖縄県民の立場に立ってアメリカにモノを言おう、県民の心を伝えようとするんではなくて、結局アメリカの「抑止力」という3文字にひれ伏してしまって、ずるずるずるっといってしまう。アメリカや財界にモノが言えない政治でいいのかっていうことが、私は今度の選挙で問われる大きな争点だと思います。私たち日本共産党は、アメリカに対しても、財界に対しても、事実と道理をつくして、諄々(じゅんじゅん)と、国民の利益に立ってモノを言うということをやってきました。

 反町 生活とか福祉とか、そういう柱でこれまでたたかってこられた感じも受けるんですが。

 志位 これはもちろん国民のみなさんの切実な願いを実現するということが出発点になってくる。しかし、どんな願いを実現しようと思っても結局そこに行き着くと(反町「ほう」)。たとえば普天間問題でも、本当に解決しようと思ったら無条件撤去しか道がない。アメリカにちゃんとモノをいわなかったら、できませんということになりますよね。あるいは、たとえば後期高齢者医療制度の問題がなぜ先送りになってしまうかといったら、日本経団連が医療費抑制という号令をかけて、それに結局屈してしまってモノが言えないことからきている。あるいは財界が「法人税を下げろ、消費税を上げろ」といったら、やはりそれに屈してしまう。そういう政治でいいのか。やはり国民の本当に暮らしをよくしたい、平和をよくしたいという願いを実現しようと思ったら、ちゃんとアメリカに正面からモノを言う、財界にもモノを言う。ただ、けんか腰でモノを言うのではなくて、相手がアメリカでも財界でも、立場が違っても、否定することができない事実や道理があるはずですよね。それをぶつけて、モノを言っていく。そういう政党が必要だということを訴えたいと思います。

圧倒的「第1党」は無党派層――この方々にどれだけ訴えを広げるか

 また、「まだ(投票先を)決めていない人が5割を超えているなかで、新党乱立の動きをどうみるか」(反町氏)の質問に志位氏は次のように答えました。

 志位 新党といいますけれども、中身は新しくないですね。顔ぶれみますと、すべてが自民党の内閣の閣僚だった人たちじゃないですか。「みんなの党」にしても、「たちあがれ日本」にしても、みんなそうですね。自民党という泥舟が沈んでいくなかで、一緒に沈みたくないという人が「救命ボート」で出てきたっていう感じですね。ですから中身は新しいものはありません。

 一番大事なのは、「まだ決めていない」方が(同番組の世論調査で)55・6%、圧倒的な「第1党」はこういう方がたなんですよ。こういう方は、自公政治にはもう二度と戻りたくない、しかし民主党にも幻滅したという方がたなんですね。そういう体験を積んで、「政治を変えたい」という願いを本当に託せる党はどの党なのかと真剣に考えてらっしゃる方が、55・6%ですから、やはりこういう方がたのなかに、あと1カ月半、どれだけ支持を広げられるかだと思います。

アメリカの印象、北朝鮮問題について

 番組の最後に、こういうやりとりがありました。

 八木 日本共産党のトップとして史上初めて訪米した志位さんにお話をうかがってきたんですが、個人的にもアメリカは初めてだそうですね。

 志位 なかなかプライベートだけで行くわけにはいかなかったので、個人的にも初めてです。

 八木 想像と違うところがありましたか。

 志位 いろいろな体験をしました。バーモントにも行きました。ここは核兵器廃絶決議を上下両院で採択していたので、連絡をとりましたら、ぜひおいでくださいということで、大歓迎を受けました。やっぱりリンゴとハチミツが特産でリンゴジュースがおいしかったですね。

 八木 ほかに個人的に時間をとられたのは。

 志位 5月2日の夜がたまたま空いたので、ブロードウェイでミュージカルを見ました。「マンマ・ミーア!」というものです。(笑い)

 八木 アバの曲ですね。

 志位 ええ。曲もとてもいいですし、踊りもさすがに本場の迫力でした。私は、ミュージカルは好きで、よく見にいくんですよ。「レ・ミゼラブル」とか。

 八木 行かれる前と後で印象が変わったことは。

 志位 連邦議会の議員さんなどと話していても、率直な議論が好きですね。意見が違ってもはっきり言うことが大事と感じましたね。それからバーモントでは、草の根の民主主義の伝統が深いなと感じました。

 反町 東京都の40代の方からメールです。「アメリカに行ったのは驚きでしたが、であればなおのこと、いまこそ北朝鮮に行かれる気はありませんか。北朝鮮と渡り合えるのは共産党しかないと思うのですが」。これはどうですか。

 志位 北朝鮮の労働党とは日本共産党は断絶状態なんですよ。これは歴史がありまして、1980年代の初期にラングーン事件、テロ事件があったでしょう。それから日本漁船銃撃事件があった。われわれが北の犯行だと厳しく批判しましたが、向こうから「敵の側にくみするものだ」ときて、それ以来、党と党は断絶状態なんですよ。ですからいまの国際政治のさまざまな場面で、私たちの正論をいうということをやっていきたいと思います。

 若松 ミュージカルがお好きだと初めて聞いたので、また来ていただいて。(笑い)

 八木 いろいろうかがっていきたいと思います。





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