2010年5月11日(火)「しんぶん赤旗」

5・16全国青年大集会に参加

奪われたもの取り戻そう

偽装請負で働かされ解雇… 自己責任にさせられていたんだ

直接雇用求めたたかう 柴田勝之さん(30)


 5月16日に東京で開かれる「全国青年大集会2010」に、熊本から参加する青年がいます。「派遣切り」され、派遣先への直接雇用を求めてたたかっている柴田勝之さん(30)です。その思いは―。(伊藤悠希)


写真

(写真)街頭で訴える柴田さん=4月21日、熊本市

 柴田さんは4月はじめ、熊本県球磨郡あさぎり町から熊本市内に引っ越し、1人暮らしを始めたばかりです。偽装請負で働かされ、そのうえ解雇までされました。4月6日、仲間とNECセミコンダクターズ(現・ルネサスセミコンダクタ)九州・山口に直接雇用を求めて熊本地裁に提訴しました。

 この日、繁華街でNECセミコンに直接雇用を求める署名と労働者派遣法の抜本改正を求める署名を集めました。

若い人も署名

 「若い人たちがたくさん止まって署名をしてくれました。『兄ちゃんがんばってや』と声をかけてくれる人もいて、励まされました。人ごとではないと思ってくれていると感じました」

 柴田さんは全国青年大集会に参加するのは初めてです。「世の中は変わらないと思っていたんですが、この間のたたかいで一人ひとりが立ち上がれば変えていけることに気づきました。集会では、人として普通に生きる権利と希望を自分たちの力で取り戻そう、とよびかけたい」

 08年に開かれた前回の大集会に熊本県から参加者したのは1人でした。今回は柴田さんを含めて7人が参加します。

 柴田さんは約1年前まではNECセミコンの錦工場(熊本県錦町)で働いていました。半導体の部品を運搬する仕事。全工程にたずさわり、納期の管理も行う部署です。トラブルにも対処し、出荷時間に間に合わせる責任もありました。

 高校を中退後、建設現場、電気の配線や水道管の設置作業、警備の仕事をしてきました。将来が見える安定した仕事につきたいと、地元の「人吉急便」の社員となって、NECセミコンで働きました。表向きは請負労働でしたが、実際は派遣労働という偽装請負でした。

 人吉急便とNECセミコンの間には日本通運とNECロジスティクスが介在。重層の違法行為だったのです。04年4月から約5年間働いてきました。

 「生産縮小のため」という理由で解雇されたのは09年2月のこと。社長の前で“誰が解雇されても異議申し立てしません”という誓約書にサインさせられました。

 仕事を探そうと履歴書に記入しているとき、「NECで一生働こうと思っていたのに、なぜ履歴書を書いているのだろう」と違和感を覚えました。

突然訪問され

 突然、家に日本共産党の人が訪ねてきました。同じようにNECセミコンを解雇された人から話を聞いて、訪問したといいます。驚きながらも話をし、労働組合を紹介されました。

 後日、ローカルユニオン熊本に相談し、偽装請負だったことを知りました。

 柴田さんは熊本市内で開催された「雇用シンポ」に参加。自分が解雇されたのは「仕方がない」と思っていましたが、自分だけの責任ではなかったのだと衝撃を受けました。

 日経連(現在の日本経団連)が1995年に提唱した「新時代の『日本的経営』」について学び、正社員を減らして非正規雇用に置き換える大企業の戦略を初めて知りました。

 NECセミコンの現場がまさしくその通りだったと気づいた柴田さん。「昇給なし、約15万円の月給、一時金なし…。将来を描けず、生活することだけで精いっぱい。人間らしさを奪われてきたことまで自己責任にさせられていると気づいたとき、自分だけの問題ではない、たたかおう、と思いました。子どもたちが大きくなったとき、そのときのおとなは何してたんだ、と言われたくないですしね」

 柴田さんは解雇された2人とともに09年3月、厚生労働省熊本労働局に直接雇用と偽装請負の是正を求める申告書を提出。8月、熊本労働局は偽装請負を認定し、直接雇用を推奨する指導をしました。その後、NECセミコンと団体交渉を行いますが、直接雇用については拒否され続け、ことし4月に提訴することになりました。

 柴田さんは、青年大集会への期待を語ります。「全国で同じようにたたかっている人からも、おれたちのたたかいは世の中の片隅でやってることじゃない、と勇気をもらえると思います」


地図

5・16全国青年大集会

 「まともに生活できる仕事を! 人間らしく働きたい! 全国青年大集会2010」は5月16日、午前11時から東京・明治公園で開かれます。明治公園は、JR千駄ケ谷駅下車徒歩5分。





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