2010年5月10日(月)「しんぶん赤旗」

国民投票法

「施行」前に策動強める改憲勢力

予定期日18日 矛盾と破たんを拡大


 改憲手続き法に基づく国民投票法の「施行期日」が18日に迫るなか、改憲勢力が同法の「施行」をテコに改憲機運を盛り上げようと画策しています。


 「逐次党内でまとまった(改憲)条項を国会に提出して、憲法改正の促進に使っていきたい」。自民党憲法改正推進本部事務局長の中谷元・元防衛庁長官は3日の改憲派団体主催の集会であからさまに強調しました。また同氏は、自衛隊の派兵恒久法案を「5月下旬に国会に提出する」と述べました。

 同党は憲法記念日発表の談話で「国民投票法が施行され、憲法改正が可能となる」と同法“施行”を当然視し、「新憲法の制定に取り組んでいく」と表明。乱立する新党も、衆参両院に設置された改憲原案の審査権限を持つ憲法審査会を「始動させ、自主憲法制定の議論を」(たちあがれ日本)とけしかけています。

 しかし、国民投票法公布(2007年5月)後3年間の経緯と到達点、また中身からみて、強引な「施行」は許されず、廃止しかありません。

改憲派議員に「ノー」の審判

 改憲勢力が改憲論議建て直しのテコにしようとする国民投票法は、憲法9条改憲を実行に移すための法律です。「戦後レジームからの脱却」を掲げ、任期中の明文改憲を言明した安倍晋三首相の指示で07年5月、当時多数を握っていた自民、公明両党が国民の強い反対を押し切って強行成立させました。

 しかし、こうした改憲路線は、07年7月の参院選での自民党惨敗、昨年8月の総選挙での自公政権退場の審判で、国民から「ノー」を突きつけられました。改憲策動のセンターだった自民党は“崩壊”の様相。自民党を中心に各党改憲派議員でつくる新憲法制定議員同盟の所属議員は激減しています。民意を無視して「施行」というわけにはいきません。

 また、同法には「施行」までの3年間に関連法整備を義務づけた付則が盛り込まれ、参院では18項目におよぶ付帯決議がなされました。ところが「満18歳以上」とされた投票年齢をめぐる民法や公職選挙法などの整備や、公務員法上の政治活動規制の国民投票運動への適用をめぐる整備などはまったく進んでいません。法整備義務の違反は違法を意味します。

中身問題だらけ「改憲手続き法」

 そもそも中身も問題だらけです。同法は、最低投票率を設けないなど改憲のハードルを低く設定。広報協議会は議席数に応じて構成され、改憲派に有利な「広報」がされる仕組みです。また、公務員・教育者の国民投票運動について「地位利用」を口実に制限するなど、主権者国民の運動を抑え込む重大な内容が含まれています。

 政治的にも法的にも崩れている国民投票法の「施行」。民主党の元憲法調査会長代理である簗瀬進参院予算委員長は、自身のホームページで「法施行の重要な前提が欠如している以上、施行することができず事実上廃案とすべき法律である」と述べています。自民党憲法改正推進本部のメンバーの一人も、「国民投票法の施行には法理論上も政治実態上も問題がある。仮にこのまま施行するとしても、強引に改憲原案を出し、議論を強行すると逆戻りになる」と述べます。強引な改憲原案の国会提出は、正当性に問題を生じ、矛盾と破たんを深めざるを得ません。

 日本共産党は、国民の意思を無視し、9条改憲を強引に押し付ける改憲手続き法そのものに一貫して反対してきました。(中祖寅一)





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