2010年5月1日(土)「しんぶん赤旗」
国境河川の“汚染”
アルゼンチンとウルグアイ
紛争解決へ合意
【メキシコ市=菅原啓】アルゼンチンのフェルナンデス大統領とウルグアイのムヒカ大統領は28日、ブエノスアイレスで会談し、ウルグアイ川(ラプラタ川の支流)の環境をめぐる両国の紛争を解決する方向で合意しました。
ウルグアイ川は両国を隔てる国境となっており、2003年にウルグアイ側にある町フライベントスにパルプ工場を建設する計画が発表されて以来、工場から排出される化学廃棄物の危険性をめぐって両国が対立を深めてきました。
アルゼンチンの環境団体は、廃棄物が水質の汚染を引き起こすと反発。フライベントス近郊の両国を結ぶ橋を3年前から実力で封鎖してきました。
アルゼンチン政府も環境団体の主張を支持。橋の封鎖には賛同しないとするものの、警察隊による封鎖解除などの手段には訴えず、過激な行動を事実上容認してきました。
両国は1975年にウルグアイ川の水質保全の協定を結び、水質を汚染する可能性のある新工場建設などは事前に報告しあうことを約束していました。アルゼンチン政府は、ウルグアイ政府を協定違反と強く非難。ウルグアイ政府は対抗措置として、南米諸国連合(UNASUR)の事務局長職にアルゼンチンのキルチネル前大統領が就任する案に反対を貫くなど、両国関係は緊張した状況が続いてきました。
この問題を審理してきた国際司法裁判所は最近、ウルグアイが工場建設について隣国に十分な説明をしなかった過失を認める一方、環境汚染につながるというアルゼンチン側の主張については確かな証拠がないと退ける判決を下しました。
首脳会談はこの判決を受けて開かれたもので、両国が判決を受け入れ、ウルグアイの河川管理委員会に工場建設による環境への影響について調査させることなどで合意しました。
アルゼンチンの環境団体は、合意受け入れを拒否し、協定違反についてウルグアイ側の謝罪を求めるなどとする声明を発表しています。フェルナンデス政権が、こうした強硬派を説得できるかどうか政治的手腕が問われています。
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