2010年4月26日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
名物はカーリング
目指せ五輪 小学生も70代も
北海道・北見市常呂町(ところちょう)
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「名物といえばホタテと玉ねぎくらい。あ、忘れてた。この町一番の名物、カーリング」―。
女子高校生たちが、カーリングチームをつくり、“自分探し”と友情をはぐくむ、映画「シムソンズ」(2006年公開)のワンシーンです。
舞台は北海道・旧常呂町(ところちょう)=現北見市常呂町=。加藤ローサ演じる女子高校生たちは、2002年のソルトレークシティー冬季五輪に出場しました。
2月のバンクーバー冬季五輪に出場した本橋麻里、近江谷杏菜両選手が「常呂」出身。これまで男女10人が五輪に出場しています。
札幌からJR特急とバスを乗り継ぎ約7時間。オホーツク海とサロマ湖に面した人口約4600人の常呂町は、2006年に旧北見市、留辺蘂(るべしべ)町、端野町と合併した漁業と農業の街です。
常呂町の中心地にある「常呂町手工芸の館」。カーリングのストーン(取っ手の付いた石)を模した小物入れやストラップの焼き物を販売していました。
「常呂からオリンピック選手が出るのはうれしいですね」と話す同館の女性(36)。
隣接する「常呂町カーリングホール」では、「北海道ジュニアカーリング選手権大会」が開かれ、21歳未満の道内強豪チームの熱気にあふれていました。
身を乗り出して観戦する地元の男性(46)は、中学生の子どもがカーリングをしているといいます。「力まかせじゃだめなんだ。瞬発力も必要だし、頭も使うよ」と語ります。
カーリングは、氷の粒がまかれた氷上で約20キロのストーンを滑らせ、レーンの両端にある円の中心により近い場所に置き、得点を得るスポーツです。
氷の粒を溶かしてストーンを滑りやすくするために、ブラシで掃く「スウィーピング」の姿が印象的です。
相手の作戦を2手、3手先まで読む必要があることから、「氷上のチェス」とよばれ、試合時間は2時間半におよぶことも。正確な投球やスウィーピングのために体力が必要です。
町内には、36のチームがあり、70代の選手もいます。
北見市教育委員会常呂教育事務所生涯学習課副主幹の臼井弘昭さん(49)は、「いくつになってもできるのがいいところですね。冬場のあまった時間も活用できます」。小学校4年生から高校まで体育の授業にも取り入れられています。
女子「常呂高校」チームのコーチ・小林博文さん(47)の本業は漁業。夜遅くまでチームの指導にあたっています。「チームは精神的に強くなったし、マナーも身に付いたと思います」と話します。
選手たちはこの春、札幌の大学に進学しました。
「子どもに夢を与えられるのが、スポーツの一番の目標じゃないですか」。こう話すのは北海道カーリング協会の田渕収一競技委員長です。
「常呂では身近にオリンピック選手がいるから、子どもたちは『自分も行けるんじゃないか』と夢が持てる。それを親も地域も応援して、街おこしにもなっています」と話します。
田渕さんは、「事業仕分け」で五輪関連予算が減らされようとしたことに触れて、「どのオリンピック選手も一生懸命で、そこまでの過程が大事じゃないですか。そこに税金を使ってもいいのではないでしょうか」と指摘します。(北海道・森英士)
国内初の屋内カーリングホール
「常呂町カーリングホール」は、国内初の屋内カーリング専用ホール。1988年に建設されました。
シーズン中は町内のリーグ戦や各種の大会でにぎわい、市外の人でも利用できます。開館期間は、10月中旬から3月末まで。


