2010年4月22日(木)「しんぶん赤旗」

「金融危機と過剰生産恐慌の結合」とは?


 〈問い〉第25回党大会決定に「金融危機と過剰生産恐慌の結合」という言葉が出てきますが、どういうことでしょうか?

 〈答え〉 2008年に激化した世界経済危機は、「米国発の金融危機」などと呼ばれましたが、実際には、その土台に「過剰生産恐慌」がありました。

 「過剰生産恐慌」とは、“モノをつくり過ぎて社会全体が苦しむ”ことで、資本主義につきものの病です。資本家は、より大きな利潤追求を至上目的として生産活動をすすめ、過度の投資・投機=バブル(過熱の時期)への軌道を暴走してしまいます。他方では、労働者にたいする搾取・収奪の強化によって消費購買力を奪ってしまいます。その結果、市場での生産と消費の不均衡が激しくなって爆発し、急激に市場が収縮し、経済の仕組みがマヒすることです。

 米国経済の好景気を支えたのは、“借金でモノを買う”方式によって、現実の需要から遊離した消費を膨れ上がらせる仕組みでした。返済能力のない低所得者層に、銀行がお金を貸しローンを組ませて住宅を購入させます。“売れた”と見なして生産が拡大されます。しかし実際には住宅はまだ売り手の側にあるわけで、これは架空の需要にほかなりません。こうして米国の住宅産業の活況がつくりだされ、その方式が自動車産業など他の部門にも広がり、バブルになってゆきました。

 これに拍車をかけたのが、金融分野のバブルです。巨大銀行・投資会社が、住宅ローンの不良債権という素性を隠した「金融商品」を仕立て上げ、世界中に販売したのです。アメリカの住宅バブルが崩壊し、巨大投資銀行が倒産に直面し、自動車産業も危機に陥り、さらに連鎖的に世界に危機が広がりました。党大会決定は、以上の経過と内容から、今日の世界経済危機を「金融危機と過剰生産恐慌の結合」と見ているのです。

 そのなかで、日本経済も深刻な危機に陥りました。大企業の生産は急速に縮小し、労働者の大量リストラ、「派遣切り」が強行され、中小企業の倒産が進みました。2009年のGDP(国内総生産)は前年比マイナスで、世界でいちばんひどい落ち込みです。需要(国民の購買力)と供給(生産能力)のギャップ(ずれ)は約40兆円で、GDPの1割近くに達しています。日本で起きているのも「過剰生産恐慌」にほかなりません。

 * 不破哲三著『激動の世界はどこに向かうか 日中理論会談の報告』(新日本出版社)、同『マルクスは生きている』(平凡社新書)で、世界経済危機の土台に「過剰生産恐慌」があり、それと金融危機が結合して事態を深刻化させていることを解明しています。〔2010・4・22〕





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