2010年4月20日(火)「しんぶん赤旗」

生活保護決まるが アパート入れず

自治体負担の仕組みに一因

都の内部資料を入手


 生活保護費の大半をピンハネし、元路上生活者を劣悪な環境の相部屋に入れる一部の悪質な「無料低額宿泊所」などの「貧困ビジネス」が横行しています。こうした背景に、福祉事務所が被保護者をそこに追い込むような、保護費の自治体負担の独特な仕組みがあることが、本紙が入手した東京都の内部文書などで分かりました。


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(写真)生活保護費の自治体負担分を都が持つケースを示す1965年と2003年の東京都の内部文書(手書きの文字や下線は、都の担当者のもの)

 東京都大田区などの福祉事務所では、路上生活をしていた失業者を、生活保護の受給が決定しても、なかなかアパート(賃貸住宅)へ入居させません。区指定の「無料低額宿泊所」や、低料金の旅館のドヤ(簡易宿所)などに長期間住まわせて、当事者を困惑させています。

 生活保護法では保護費の4分の3を国が、4分の1を自治体が、それぞれ負担することになっています。東京都の自治体の場合、一般的には、23区や市が自治体負担分の全額を負担。東京都は、それ以外の町村と島しょ部の自治体負担分を持っています。

 ところが、東京都の内部文書(通達)=注参照=によると、路上生活をしてきた人など、住所がない人が、新しく生活保護を受けた場合、都内のどこで申請しても、自治体負担分を全額、東京都が持つとしています。ドヤなどの旅館に入居した場合は最長3カ月まで都が負担し、「無料低額宿泊所」に入居した場合は、期限がありません。

 都の担当者は「確かに、ドヤや宿泊所で生活保護を受けると、区や市の負担はない。しかし、それはあくまで一時的なものです。アパートに入居して保護するのが制度本来のあり方です」(生活福祉部保護課)と指摘します。

 大田区の福祉事務所の担当者(蒲田生活福祉課)は、ドヤや「無料低額宿泊所」に被保護者を長期に入れていることについて、「あくまで、路上生活をしてきた人が、家事や火元の管理など1人でアパート生活が可能か判断するため」と説明します。ただ、この負担制度の存在について「知っている」と言明。「区内の被保護者が急増しており、この制度で区の負担が軽減されることを、全然考えないわけではない」と、この制度が背景にあることを事実上、認めました。

 厚生労働省の担当者によると、東京都以外の府県の市でも、「無料低額宿泊所」などに入れた場合、府県がその自治体負担分(保護費の4分の1)を持ちます。

 ただ、さいたま市など、一部の政令指定都市では、この自治体負担分を市が持つところもあります。この場合、「無料低額宿泊所」などに入れたままにして、福祉事務所が所属する自治体の負担を逃れるような事態は制度上、発生しません。


 (注)東京都の内部文書 1965(昭和40)年7月13日付の通知「生活保護法第73条及び老人福祉法第24条による保護費等都費負担対象ケースの取扱いについて」と、2003(平成15)年3月25日付の通知「宿泊所利用者に対する生活保護適用について」。





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