2010年4月17日(土)「しんぶん赤旗」

労働者派遣法改定案に対する

高橋議員の質問

衆院本会議


 16日の衆院本会議で審議入りした労働者派遣法の改定案に対して日本共産党の高橋ちづ子議員が行った質問は次の通りです。


写真

(写真)労働者派遣法改定案にたいして質問する高橋ちづ子議員=16日、衆院本会議

 私は日本共産党を代表して労働者派遣法「改正」案について質問します。1985年に労働者派遣法が成立してから四半世紀になります。職業安定法44条は、労働者供給事業、いわゆる人貸し業を明確に禁止しています。にもかかわらず、労働者派遣事業をその例外として認め、労働者派遣法が制定されました。わが党は、直接雇用を原則とする戦後の労働法制の根幹に風穴を開けるものだと厳しく批判し反対しました。当初、派遣対象業務は13の専門業務に限定されていましたが、規制緩和を求める財界の要求で26業務に拡大され、1999年には対象業務を原則自由化し、2004年には製造業にも解禁したのであります。こうして次々と規制緩和が拡大されてきた中で、何が起こったでしょうか。

 この20年間で正規雇用が減少する一方、非正規雇用は2倍に拡大し、今や労働者の3人に1人、若者と女性の2人に1人にまで広がりました。対象業務が原則自由化されてからの10年間で派遣労働者は107万人から399万人へと急増し、年収200万円未満の給与所得者は17・9%から23・2%へと増加しています。「多様で自由な働き方」などといいながら、企業にとって安上がりで使い捨て自由の雇用が拡大され、大量のワーキングプアを生み出したのです。

 一昨年のリーマン・ショックを引き金に、大企業が先頭に立って25万人もの「派遣切り」「非正規切り」をすすめました。「モノのように働かされ」、紙切れ一枚で首を切られる派遣という働き方を抜本的に改め、「正社員が当たり前」のルールを確立すること―このことが今求められています。総理、法案はこの声に応えることができますか。

 わが党は、99年の原則自由化前に戻せと主張し、派遣労働者の権利を守り、非人間的な労働実態を改善するため、製造業派遣の禁止、登録型派遣の厳格な規制などを内容とする立法提案を行ってきました。

 本法案は、製造業派遣、登録型派遣の「原則禁止」といいながら、例外という形で「二つの大穴」をあけ、ほとんどが派遣のまま残されるという、まさに派遣労働「原則容認」法案といわざるを得ません。

 以下具体的にうかがいます。

製造業派遣の禁止を求める

 二つの大穴の一つが、製造業派遣を禁止するといいながら「常時雇用する労働者」の派遣を認めていることです。「常時雇用」とは、いったいどういう意味なのですか。これまで厚生労働省は、1年以上の雇用見込みがあれば「日々雇用」や「数カ月の短期雇用を繰り返している人」も含まれると述べてきましたが、その定義は変わるのですか。明確にお答えください。

 もともと製造業で働く派遣労働者55万人のうち、64%が常用型派遣といわれています。派遣契約の中途解除で解雇された派遣労働者の8割は「常用型」です。これでどうして「常時雇用」が「雇用の安定性が比較的高い」といえるのですか。

 名だたる大企業が次々と「派遣切り」を行った、問題の多い製造業派遣はキッパリ禁止すべきではありませんか。

専門業務を例外にするな

 第二の大穴は、登録型派遣を原則禁止するとしながら、専門業務を例外としていることです。専門業務がなぜ「雇用の安定等の観点から問題が少ない」といえるのか、明確にお答えください。

 現在、専門26業務に100万人の派遣労働者が働いていますが、そのうち最も多いのが45万人を占める事務用機器操作業務です。25年前の基準で電子計算機、タイプライター、ワープロなどの事務用機器の操作と定められたままです。そのため、パソコンを使う作業があるからといって専門業務扱いにされ、実際には電話の応対やお茶くみ、コピー取りなどの仕事をさせるなど、まさに「名ばかり専門業務」がまかりとおっているのです。専門業務を偽るこうした違法行為を許さないため、対象となる専門業務を厳格に絞り込むべきではありませんか。

 専門業務の内容を見直さなければならないときに、厚生労働省政策会議では、専門業務を拡大すべきとの発言がなされていますが、とんでもありません。

 現行では、専門業務で3年を超えて派遣労働者を受け入れている業務に新たに労働者を雇い入れる場合、派遣労働者に優先的に直接雇用を申し込む義務があります。しかし法案は、この優先的雇用申し込み義務を廃止するとしています。政府は、専門業務の派遣労働者から、わずかに残されていた正社員への道すら奪っても構わないと考えているのですか。

施行期日を3年も先送り

 次に、施行期日の問題です。登録型派遣と製造業派遣の原則禁止の施行期日を3年も先送りしたのはなぜですか。そればかりか登録型派遣のうち、今後の検討で「問題が少ない」とされた業務は5年も猶予されるのです。使い捨て自由の派遣労働を本気で規制する気があるのか疑念を持たざるをえません。

重大な改悪や後退した内容

 ほかにも、重大な改悪や後退した内容があります。

 違法派遣があった場合、派遣先が直接雇用を申し込んだとみなす「雇用申し込みみなし」制度を盛り込みましたが、極めて不十分です。

 その理由は、派遣先が「違法であることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった」場合は適用されないとしていることです。派遣先が違法を「知らなかった」といえばすまされてしまうのですか。派遣先の故意・過失要件は削除するべきではありませんか。

 また、直接雇用になっても労働条件は以前と同じになることです。例えば派遣元と3カ月の雇用契約をくり返し更新し、初めから違法状態で何年も働いてきた場合、直接雇用されても3カ月の契約ということになるのか、お答えください。

 これでは違法派遣で犠牲とされた派遣労働者を守ることはできません。期間の定めなく雇用される制度にするべきではありませんか。

 今回新たに、グループ企業内への派遣を認める規定が盛り込まれました。グループ企業内での派遣は、親会社が本来直接雇用すべき労働者を子会社である派遣会社に転籍させ、派遣労働者として活用するものです。禁止されている「専ら派遣」そのものであり、「第2人事部」と批判されてきました。むしろグループ企業内派遣は厳しく規制するべきではありませんか。

 派遣先企業の責任逃れを許さず、派遣労働者の雇用と権利を守るためには、「均等待遇の確保」「派遣先の団体交渉応諾義務」「育児休業を理由とした不利益取り扱い禁止」「性別を理由とする差別的取り扱いの禁止」等の規定が盛り込まれるべきでした。昨年民主党など野党3党が提出した法案にはあったこれらの規定がなぜなくなったのですか。

 連立政権の一員である福島大臣にも、このような法案をどうして認めたのか、お聞きします。

 今の労働政策審議会は、自公政権時代のメンバーがそのまま残っており、本法案は基本的に前政権の案を踏襲するものとして作成されました。こうした中、政府がたった一点、間接雇用である派遣法とは相いれない事前面接の解禁を法案要綱から削除するという修正をしただけで、労働政策審議会が答申の尊重を求める意見書を出すという異例の事態となったのです。大臣は労政審に対し、「二度とこういうことがないようにする」と謝罪したといいますが事実ですか。

 答申を一つも変えてはならないとするなら、国会で審議する意味などなくなるではありませんか。大臣の行為は、派遣法の抜本改正を期待している多くの国民に対する裏切りにほかなりません。国民にこそ謝罪すべきではありませんか。

 以上、指摘してきたように法案には数多くの問題点があります。国会審議にあたっては、「派遣切り」にあった当事者を始め、国民の声を十分くみ上げるべきです。日本共産党は、徹底した審議を通じて、本法案の抜本的な修正をめざして奮闘する決意を述べ、質問を終わります。





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