2010年4月8日(木)「しんぶん赤旗」

主張

介護保険10年

安心の制度へ、抜本見直しを


 介護保険制度が発足して10年を迎えました。「介護の社会化」をうたい文句に発足した制度ですが、介護疲れによる無理心中など痛ましい事件が後を絶ちません。介護保険料・利用料の重い負担、介護サービスの圧倒的な不足など、「負担あって介護なし」ともいうべきさまざまな問題が浮き彫りになっています。制度を検証し抜本的な見直しをおこなうことが重要です。

公的介護の整備は急務

 日本ではいま75歳以上の高齢者は1164万人、2025年には「団塊の世代」もすべて75歳となり2000万人を超します。1人暮らしや夫婦だけの高齢世帯、認知症の高齢者などが増加しているいま、家族介護に依存する現状をあらため、公的な介護体制を整備することは急務の課題です。

 旧自公政権がすすめてきたのは、社会保障費削減のために給付の抑制と国民負担を強化し、高齢者・家族に「自立・自助」を強要する制度改悪でした。「介護の社会化」に真っ向から反します。

 介護保険も05年10月の「施設給付の見直し」で特別養護老人ホームなどの食費・居住費が保険の対象外となり、原則全額自己負担となりました。定率1割の費用負担とあわせると、月々15万〜16万円もの支払いが必要となり(ユニット型個室、市町村民税課税世帯の場合)、施設からの退所を余儀なくされる高齢者が相次ぎました。

 06年4月から施行された改悪介護保険法では、軽度者から介護ベッドなど福祉用具をとりあげました。公的な介護をもっとも必要とする低所得の高齢者を制度から排除するというまさに暴挙です。

 特別養護老人ホームの待機者42万人という厳しい現実は、国民の老後不安を募らせています。日本共産党の小池晃参院議員が国会で追及、見直しを求めましたが、国が予算を削り、低い整備目標を自治体におしつけ、施設建設を抑制してきたことが最大の原因です。

 先月札幌市でおきた認知症高齢者のグループホームでの火災による死亡事故は、防火設備の立ち遅れとともに、「1人夜勤」の貧困な職員配置基準を放置してきた国の責任を浮き彫りにしています。介護現場の深刻な人材不足も、03年と06年の介護報酬の連続削減が介護事業所の経営を危機に陥れ、介護職員の低賃金化と労働条件悪化を加速させたことが原因でした。

 政府は、世論と関係者の運動におされ、09年に介護報酬を3%引き上げ、「処遇改善交付金」を実施しました。しかし、介護職員の給与はなお全産業平均の6割程度で、月10万円も低いというのが実情です。抜本的改善が不可欠です。

国や自治体の責任強め

 介護保険の見直しに向けた論議が始まっていますが、国民の保険料負担をおさえながら、安心して利用できる介護制度を実現するために、国庫負担を大幅に増やすことが決定的に重要です。

 日本共産党は、介護制度の改悪に反対し、国や自治体の責任による介護体制の整備をめざして、国政や地方政治の場で一貫して取り組んできました。日本共産党が主張してきた国庫負担引き上げなどの政策方向は、全国市長会をはじめ多くの国民の共通の声です。

 憲法25条の生存権理念にもとづく安心・安全の介護保障制度の確立へ、日本共産党は国民と共同を広げ、全力をあげて取り組みます。





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