2010年4月5日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

並行在来線 守れ

北陸新幹線開業で経営分離するな


 2014年開業に向けJR北陸新幹線・長野―金沢間の工事が進んでいます。鳩山政権が昨年末、旧政権の「与党合意」である新幹線並行在来線の「JRから経営分離」を白紙にすると表明しました。新たな状況のなか、沿線各地で「地域住民の足を守ろう」と声があがっています。


沿線の願いは「足」確保

新潟の3市連絡会

 新潟県上越市・糸魚川市・妙高市の住民と労組で組織する在来線を守る三市連絡会の第5回総会が3月27日に開かれました。活動を始めて5年目になります。

 「新幹線開業で上越地域がどうなるのか」―は地域住民の大きな関心事です。

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 在来線がJRから切り離されると、第三セクター会社が運営する妙高高原(妙高市)―直江津(上越市)―市振(糸魚川市)に加え、直江津―新潟(新潟市)の信越線はJR東日本に、直江津―越後湯沢(湯沢町)が北越急行に、大糸線がJR西日本と、複雑な交通体系になります。三セク会社は新潟県の試算で、三百数十億円の赤字が見込まれ、先行きが不透明です。

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 国とJRの関与なしに並行在来線の安定運行・運営はないことから三市連絡会は「1990年政府・与党合意の見直し」を要求の中心にかかげて運動を進めてきました。

 運動の前進には、3市に幅広い住民が結集した組織が必要だということでこの間、糸魚川市の「大糸線・北陸線を守る会」に続き、「妙高と信越本線を考える会」が結成され、09年には「在来線と地域のあり方を考える直江津・頚城の会」が発足しました。そして三つの会を束ねる「地域の会連絡会」がつくられました。今年は、新井と高田での会結成をめざします。

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(写真)新潟県上越市の直江津駅を出発する6・6沿線大行進=昨年6月6日(杉本敏宏氏提供)

 三市連絡会は発足以来毎月の幹事会で、在来線をめぐる情勢を学習し、節々でシンポジウムなども開いてきました。さらに「住民に見える運動を」と取り組んだのが、“義と愛”(「義」は上杉謙信の旗、「愛」は直江兼続のかぶとに書いた標語にちなむ)の沿線大行進・住民総決起集会でした。昨年6月6日、直江津と長野から妙高高原に向けて行進し、住民にアピールしました。

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 三市連絡会は行政への働きかけを重視してきました。昨年10月の上越市長選では「公開アンケート」を行い、「率先行動」と回答した現市長と12月に懇談・要請をしました。同8日、民主党中心政権の方針を聞くために上京団を派遣しましたが、これがその後の「政府・与党合意は白紙」につながったと思います。新潟県は在来線を守るための国とJRの関与に極めて消極的です。この姿勢を変えることが当面の重要課題です。

(日本共産党元上越市議・杉本敏宏)


 北陸新幹線 整備新幹線として東京―高崎(群馬県)―長野―富山―金沢―福井―大阪を結びます。1997年10月1日に開業した東京―長野を長野新幹線と呼称しています。営業主体は東京―上越(新潟県)がJR東日本、上越―大阪がJR西日本です。


しなの鉄道の二の舞いか

在来線を守る全国連絡協議会代表世話人 松澤秀紀さんに聞く

長野にみる

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 長野新幹線開業(1997年)に伴い並行する信越線・軽井沢―篠ノ井(65・1キロ)をJR東日本から引き継いだ、しなの鉄道の経営をみて、北陸新幹線長野以北並行在来線について住民は心配しています。しなの鉄道への出資は県が大部分で、沿線市町、経済団体などがしています。発足するとき県は、乗客が多く採算は問題ないといっていました。

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 JR東日本は乗客の半分を占める篠ノ井―長野(9・3キロ)の経営権を譲渡しなかったのです。しなの鉄道は県から103億円を無利子で借り、JR東日本の線路や駅舎など鉄道資産を買いました。国の支援がほとんどないなか鉄道経営をしてきました。しかし経営が悪化し、県は支援するとして貸付金103億円を放棄しました。運賃は開業後2回、値上げしました。定期券割引率も下げました。

 今、しなの鉄道は黒字といっていますが、五つの中心駅以外は市町に「委託」し、職員減、賃金を下げるなどし、住民を犠牲にしての経営が実態です。

 新幹線が長野以北に延伸し、並行在来線を新会社が引き継いだ場合、どうなるか。しなの鉄道より乗客が少なく、豪雪地帯でもあり、当然、経営が困難になるでしょう。県内4市町でつくる対策協議会が、そのまま無償で引き継いで単年度1億5千万円の赤字になると試算しています。

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 在来線は長距離の運送と地域住民の足をかねそなえています。新幹線は長距離の利用にいいですが、特急料金を含めた運賃が高く利用しにくいです。在来線があって新幹線も生きます。JRは住民の足になっている在来線を運行すべきです。

 長野県の住民は、長野新幹線開業前から信越線を守るため裁判もたたかい運動をしてきました。昨年6月、「守ろう!信越線 沿線大行動」(同実行委員会主催)をくりひろげました。JR、国が住民の生活の足になっている在来線に責任を持つべきだと声をあげたのです。在来線の存続・充実を求めて市町村をつないだ運動をひろげたいと思っています。

(長野県坂城町在住)

JRの責任と国の役割求め提言

富山の会

 富山県の人たちでつくる北陸線・ローカル線の存続と公共交通よくする富山の会は2月25日、「将来も維持可能な並行在来線・北陸本線のために―JRの社会的責任と国の役割を求める提言」を発表しました。提言(要旨)を紹介します。

 (1)JRは並行在来線の運行と維持を経営経費に組み込み社会的責任を果たし、国は地域交通と貨物鉄道の全国ネットワークを守る役割を。

 (2)より便利、より安全で快適な並行在来線のための基本原則を確立し、県境をつなぎ、暮らしと地域経済の発展に役割を発揮する鉄道に。〈10原則〉▽電車維持▽複線・電化維持▽列車本数増、JR線と私鉄の接続を便利にする▽運賃を高くしない▽駅のバリアフリー化と利便性向上、駅員がいる駅、車掌がいる電車▽所要時間短縮▽安全確保、事故・災害に対応する国の制度・補助の確立▽地元や地域の負担軽減▽経営基盤が強い経営主体をつくる▽駅とバスなど公共交通機関との接続が便利な運行。

 (3)鉄道委員会(仮称)の設置。県、沿線自治体、交通事業者、交通労働者、専門家などともに住民が事業計画、検討・検証を行う。





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