2010年3月28日(日)「しんぶん赤旗」
ギョーザ事件 男拘束
中国当局 供述の注射器発見
【北京=山田俊英】中国政府は26日夜、2007年12月から08年1月にかけて日本で起きた中国製冷凍ギョーザによる中毒事件で、ギョーザに毒を入れた容疑者として製造工場の元臨時従業員を拘束したと日本政府に通告しました。
国営新華社通信によると、男は製造元、天洋食品(河北省石家荘市)に勤めていた容疑者(36)。数日前、警察に身柄を拘束されました。
取り調べに対し、同容疑者は、同社の待遇に対する不満と他の従業員への恨みを晴らすためギョーザに毒を入れたと供述しているといいます。警察は犯行に使った注射器2本を下水道で発見し、多くの証人、証言を集めたと伝えられます。中毒を起こした製品と同じ有機リン酸系殺虫剤、メタミドホスが注射器に付着していたとの情報もあります。
天洋食品で食堂の管理人だった容疑者がいつ、どうやって毒を混入したかなど具体的な手口は明らかにされておらず、捜査が続いています。
この事件では千葉、兵庫両県で10人の被害者を出し、日本人の対中感情悪化の原因になっていました。日本側の問題としては、食料の6割以上を輸入しながら検査体制が貧弱で、9割が検査なしで輸入されている実態が浮き彫りになりました。
今も貧弱 日本の検査体制
中国製冷凍ギョーザ中毒事件は日中両政府の重要案件でしたが、事件から2年を経てようやく進展に踏み出しました。ただ、容疑者が製造から出荷のどの段階で、どうやって毒を入れたかなど、まだ多くのことが究明される必要があります。
当初は日中の捜査当局がいずれも自国で混入した可能性を否定。しかし08年8月、中国で保管していた同製品を食べた人がメタミドホスによる中毒を起こし、中国側で混入された疑いが強まりました。日本側は繰り返し、真相究明を働きかけてきましたが、捜査は進みませんでした。
国営新華社通信は26日、容疑者拘束を伝えた報道で「中国政府は事件を高度に重視し、2年間不断の努力を続けてきた」と述べ、日中間の懸案を解決するために尽力したことを強調しました。
昨年10月の日中首脳会談では食品安全に関するハイレベル協議を行うことが決まり、中国からの食品輸入が増えるもとで安全確保の枠組みができることになりました。
一方、輸入食品に対する日本の貧弱な検査体制は今も改善されていません。事件当時、全国の港、空港の検疫所に配置されていた食品衛生監視員は334人。検査される輸入食品はわずか10%にすぎません。
日本共産党国会議員団は事件後、福田康夫首相(当時)に対し、検査率を50%以上に引き上げるため大幅な増員を図るよう申し入れました。食品衛生監視員は09年までに約30人が増員されましたが、根本的な解決にはなっていません。
(北京=山田俊英)

