2010年3月31日(水)「しんぶん赤旗」

自給率50%目標 2020年度

「農業基本計画」閣議決定 輸入自由化は推進


 政府は30日、今後10年間の農政方針を示す「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定しました。2020年度の食料自給率をカロリーベースで50%とする目標を掲げました。08年度実績の41%に比べ9ポイント引き上げる計画です。

 「国家戦略」として「国民全体で農業・農村を支える社会」の創造をめざすことが必要としています。

 自民党・公明党がすすめた大規模農家中心の支援を転換し、(1)すべての販売農家を対象にして生産に必要な費用(生産費)と販売価格の差額を補てんする戸別所得補償の創設(2)安全や安心にそった生産体制とリスク管理(3)農産物の加工・直売・体験交流などで付加価値を高める「6次産業化」などを政策の柱にあげています。

 50%を実現するために必要な農地面積は09年の実績をほぼ維持。主食用米の生産は減るものの、パンやめんに使う米粉用50万トン、飼料用の米を70万トンにするなど稲は大幅に増やします。麦類は水田二毛作で2倍化、大豆も水田転作で2倍以上の増産計画となっています。野菜や果物、畜産物は現状維持です。


解説

裏付け欠く政策転換

 今回の基本計画は、「大幅な政策の転換」をいい、自給率向上への意欲を示したものの、裏づけがないものになっています。

 鳩山内閣は2010年度の農業予算を減額しています。2010年度からモデル事業として始まるコメの戸別所得補償も水準が低く、地域性も考慮されないなど農家に展望を与えません。11年度から本格実施するとの記述も財政当局が難色を示し最終的に見送りました。

 自給率向上の方針にもっとも矛盾するのは輸入自由化推進です。FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)にたいし「取り組む」ことを明記しています。FTAは相互に関税を原則ゼロにする協定です。日本の工業製品はゼロ関税が多く、協定締結には農業を犠牲にすることになります。農産物輸出大国のオーストラリアやアメリカなどとのFTAは中止しなければなりません。

 国際的には、基本計画でも指摘しているように食料需要が高まり、輸出規制をする国が増え、食料暴動もおきる事態になっています。コメ輸入がさらに増える案が出ているWTO(世界貿易機関)は、自国の食料政策を決める権利「食料主権」の立場で改正が必要です。

 農産物の価格保障を中心にして環境を考慮した所得補償を組み込んだ農業予算を充実させ、農業再生に本腰を入れた政治が緊急に求められます。(中沢睦夫)





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