2010年3月23日(火)「しんぶん赤旗」
高速道値下げ原資3兆円
不採算道建設に流用も
民主、税のムダ遣いを容認
政府は今国会に、高速道路の料金値下げなどのために高速道路会社に投入している税金3兆円を、高速道路建設費用に流用できるようにする道路整備事業財政特別措置法改定案を提出しています。
高速道路建設は料金収入でまかなうことになっていますが、法案が成立すれば税金の投入が可能になります。高速道路計画を抜本的に見直さないまま、税金による際限のない高速道路建設に道を開くものです。
現在、国は、高速道路会社による料金割引などを「利便増進事業」と位置づけ、財政支援しています。改定案では、▽渋滞解消などのための車線増設▽既存高速道路を連結する高速道の新設・改築など4項目を財政支援の対象に追加します。
国会審議抜き
昨年10月の補正予算見直しで凍結された関越道、東海北陸自動車道など全国6区間の4車線化事業などの実施が可能になります。具体的な建設計画は国交省がつくる利便増進計画で決めますが、国会審議は不要です。
高速道路を建設・管理してきた旧道路公団は、小泉「構造改革」路線の“目玉”政策として2006年に民営化されました。
40兆円にのぼる長期債務は国民に肩代わりさせ、分割・民営化した6社に高速道路を貸与し、その貸付料で債務を45年で返済するとされました。
“民営化すればムダな道路はつくられず、国費も投入せず借金を返済できる”といっていましたが、ムダな道路計画を抜本的に見直さず、民営化会社が建設しない不採算道路でも国の直轄事業として建設を続ける仕組みが導入されました。
これに対し民主党は「国費を投入しないという政府方針や、不採算道路は建設しないという民営化の趣旨にも反する」(馬淵澄夫衆院議員=現国土交通副大臣、2009年5月)と批判していました。
しかし、昨年末に小沢一郎幹事長が行った政府への予算要望は、高速道路建設の推進と、国から高速道路会社への財政支援を要求。今回の改定案はこれを受けて出されたものです。
旧政権と同じ
政府は「すでに予算措置した財源を活用するので新たに国費を投入するわけではない」などと詭弁(きべん)を持ち出していますが、旧自公政権と変わらないといわれても仕方ない実態です。
しかも、民主党の予算要望では、建設促進のために新たな枠組みを求めており、税金投入によるムダな道路建設に歯止めがかかる保証はありません。
この法案と同時に政府は、高速道路の建設計画を決める際に、社会資本整備審議会(国土交通相の諮問機関)で議論することを義務付ける高速自動車国道法改正案も提出しています。
これに伴い、これまで道路計画を決めてきた国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)が廃止されます。同会議は国交相と一部の国会議員、学者などで構成。1、2年に1回、それも1〜2時間の審議しか行わず、ムダな道路建設の追認機関となっていました。それだけに廃止は当然のことです。
しかし、一部の専門家らでつくる社会資本整備審議会がそれに代わって国民の立場からチェックできるのかはきわめて疑問です。
大切なことは、国民から選ばれた議員が国会の場できちんと審議することです。法案には予算審議に向けて事業評価結果の公表を国に義務付けることが盛り込まれていますが、これでは不十分であり、計画決定の仕組みを抜本的に見直すべきです。(深山直人)
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