2010年3月19日(金)「しんぶん赤旗」

主張

米軍「思いやり」

「世界一気前のいい国」返上を


 政府・与党は、参議院で審議している来年度予算案を、今月中に採決し成立させる構えです。

 来年度予算案で軍事費は、今年度より162億円多い4兆7903億円となっています。海外派兵態勢の強化とならんで、在日米軍基地の再編・強化のための予算を大幅に増やしていることが特徴です。自公政権の軍事優先政治を「変えたい」という国民の願いにも、軍事費を削り福祉・暮らしに回せという切実な要求にも背を向けた政府の責任は重大です。

「安上がり」だから

 在日米軍経費の日本の直接負担には、1978年以来続いている「思いやり予算」、96年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意による経費分担、2007年度から始まった米軍再編経費があります。三つの合計2878億円が来年度に3369億円に激増するのは、米軍再編経費を480億円も増やしたからです。

 この米軍に対する手厚い「思いやり」負担をみれば、アメリカが「世界一気前のいい国」と激賞しているのも当然です。在日米軍基地の居座りを許す原因になっているのは否定できない事実です。

 チェイニー国防長官(当時)は92年に、「日本に空母戦闘部隊を維持するほうが、米国西海岸で維持するよりも安上がりなのです」とのべました。ナイ国防次官補(当時)も95年、日本が「米軍部隊の費用の70%を負担しているのだから、米国内におくよりも日本に駐留させる方が費用はかからない」といっています。

 駐日米国大使補佐官も歴任したケント・カルダー米ジョンズ・ホプキンス大学教授は、日本政府が手厚い「思いやり予算」や基地周辺住民の不満をそらす対策をとっているために、「政治的に基地が存続しやすい状況にある」(08年)と指摘しています。

 そもそも米軍が日本に駐留するのは、日本を足場にして世界各地に軍事介入していくためです。「日本防衛」のためではありません。アメリカの軍事戦略の都合で駐留しているのに、日本国民の生活に回す予算を犠牲にしてまで米軍経費を負担するのは異常です。戦争を放棄した日本が戦争に備える米軍の経費を負担するのは、憲法9条を踏みにじることになります。

 米軍基地は全国どこでも爆音被害や墜落事故、低空飛行訓練、米軍犯罪などで日本国民の安全を危険にさらしています。なかでも沖縄県民は、太平洋戦争末期の米軍占領時に土地を奪われ、そこにつくられた基地のために、言語に絶する苦しみと痛みを戦後60年以上も押し付けられてきました。

 「思いやり予算」や米軍再編経費の負担には一片の道理もありません。米軍への「思いやり」負担を全廃し、「日本は基地所在地として魅力がなくなる」(カルダー教授)ようにすることが重要です。

審議つくし大幅削減を

 約3400億円の米軍経費負担を全廃すれば、後期高齢者医療制度の廃止に伴う2000億円の予算をはじめ福祉、教育に回せます。海外での戦争に備える新型ヘリ空母の建造をやめれば約1200億円が暮らしに回せます。財源の確保のためにもムダな軍事費にメスをいれることが欠かせません。

 国民の願いに応え国会が議論を尽くし、抜本的に見直すことが求められます。



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