2010年3月8日(月)「しんぶん赤旗」

主張

シュワブ陸上案

「負担軽減」の約束投げ捨てる


 沖縄県宜野湾市の市街地にある米軍普天間基地の「移設」先をめぐり、県内名護市の米軍キャンプ・シュワブの陸上部に移す案が、政府・与党内で急浮上しています。文字通り、基地を沖縄県内で「たらいまわし」するものです。

 住民のいのちと暮らしを脅かしている普天間基地の撤去は、県民・市民が切望しています。その願いに応えるには無条件撤去を求めて交渉すべきなのに、「移設」先を求めて“迷走”を繰り返し、結局、県内「たらいまわし」とはひどすぎます。鳩山政権が掲げてきた、沖縄県民の「負担軽減」の公約さえ投げ捨てるものです。

“迷走”でなく“逆走”

 鳩山由紀夫首相は昨年の総選挙で米軍普天間基地の「国外・県外」への「移設」を約束し、民主・社民・国民新3党の鳩山政権樹立にあたっての「政策合意」(昨年9月)では、「沖縄県民の負担軽減の観点から」、米軍再編や基地のあり方について「見直しの方向で臨む」としました。鳩山政権としての県民・国民への最低限の公約です。

 普天間基地をキャンプ・シュワブの陸上部に移すだけなら、爆音などの基地被害と墜落などの危険性をそのまま移動させるだけで、なんら県民の負担軽減にはなりません。名護市の市議会が、市民の人権と生命、財産を守る立場から、「陸上案に断固反対」の意見書を決定したのも当然です。シュワブ陸上部への基地の「たらいまわし」などというのは、まさに「移設」先をめぐる“迷走”どころか“逆走”そのものです。

 もともと普天間基地を含む沖縄の米軍基地は、太平洋戦争末期の沖縄戦のさなかに、戦時国際法にも違反して一方的に土地を奪って建設し、その後も「銃剣とブルドーザー」で県民を脅して拡張してきたものです。県民が撤去・返還を求める以上、無条件で返しこそすれ、「移設」先を探す筋合いのものではありません。

 しかも問題は普天間基地だけではありません。日本のなかでも異常に米軍基地が集中している沖縄では、県民の暮らしが日夜脅かされ、広大な米軍基地によって経済活動も妨げられるなど、被害が深刻です。「負担軽減」を求める県民の願いは切実で、だからこそ沖縄県議会も2月末、普天間基地の「早期閉鎖・返還」と「県内移設」の「断念」を求める意見書を全会一致で決めています。鳩山政権が沖縄県民の「負担軽減」をいうなら、こうした県民の願いに応えて、基地の撤去・縮小を求めるべきです。

無条件撤去求めて交渉を

 県民・市民の長年の願いであった普天間基地の撤去を日米両国政府も認めなければならなくなったのは、1995年の米兵による少女暴行事件が県民の憤激を買ったためです。ところが両国政府が「移設」先探しを条件としたため、この14年近くにわたって実現しませんでした。いまこそ「移設」条件付き返還の態度を改め、無条件撤去を求めて交渉すべきです。

 鳩山政権が発足以来の5カ月近くも「移設」先探しに時間を費やし、県外に引き受け手がないからと、沖縄県民の「負担軽減」の公約にも反して、「たらいまわし」を持ち出すのはまったく道理がありません。それこそ、基地の撤去・縮小を求める、沖縄県民ぐるみ・「島ぐるみ」の反対運動に直面することが免れません。



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