2010年2月27日(土)「しんぶん赤旗」

「子ども手当法案」の問題点


 民主党政権の目玉政策である「子ども手当法」案が国会で審議されています。民主党は、中学生以下の子ども1人に月額2万6000円を支給すると公約していますが、2010年度は半額の1万3000円(年額15万6000円)で実施します。同法案のただすべき問題点は―。(西沢亨子)


支給でも負担増世帯

 鳩山内閣は、子ども手当の財源にするため、所得税と住民税の年少扶養控除(16歳未満)を廃止します。所得税は11年1月から、住民税は12年6月から増税になります。

 そうなると、子ども手当が支給されても、控除廃止で支給額が大幅に目減りします。

 これまであった児童手当は、子ども手当支給にともない、子ども手当に含まれます。児童手当を月額1万円受けていた世帯は、子ども手当が半額支給のままでは、月3000円しか収入増になりません。こうした世帯は、増税が始まる11年1月以降、負担増になります。相当数の世帯がこれに当てはまります。

 増税がのしかかる11年度以降、子ども手当が全額支給されるかどうかは、「財源のあり方も含め、改めて検討する」(長妻昭厚生労働相、23日の衆院本会議)というだけで、まったく不透明です。財務副大臣らからは全額支給に否定的な発言が相次いでいます。

 というのも、財源の見込みがまったくないからです。10年度(約2兆3000億円)については1年限りとして地方などに負担を求め、残りは国債と埋蔵金でまかなっています。11年度については、まったく財源のめどがありません。

雪だるま増税の火種

 所得税・住民税の増税が保育料などに連動し“雪だるま式”の負担増を招く恐れもあります。政府は「適切な措置を検討中」(菅直人財務相)としますが、保障はありません。

 政府は、「庶民増税抱き合わせ」という国民の批判を受けて、当初考えていた配偶者控除の廃止と23〜69歳の成年扶養控除の廃止について、10年度は見送りました。しかし今後、それらの庶民増税が持ち出される恐れがあります。

 配偶者控除が廃止されると、かりに子ども手当が全額支給された場合でも差し引きで負担増になる世帯が出ることが日本共産党の佐々木憲昭議員の質問で明らかになりました(26日、衆院財金委)。

総合的施策が不可欠

 子育てを支えるには、認可保育所を抜本的に増やし、深刻な状況にある待機児童を解消する、義務教育の完全無償化―などの総合的な施策が欠かせません。

 日本共産党の高橋ちづ子議員は23日の衆院本会議で、「保育所整備などが遅れたまま、子ども手当を配ったら、あとは『自助努力、自己責任』ということにならないか」とただしました。

 長妻厚労相は「そういう発想ではない。『子ども・子育てビジョン』にもとづいて保育所を増やす」と答えました。しかし、同ビジョンは保育への公的な責任を大幅に後退させ保育を市場化する方向を盛り込んだものです。

給食費天引きの恐れ

 鳩山由紀夫首相は長妻厚労相に、親が滞納している学校給食費や保育料、税金などを子ども手当から天引きする仕組みの検討を指示しています。

 23日の衆院本会議で高橋議員が「すべきではない」と迫ったのに対し、長妻厚労相は「(子どものためという)趣旨が生かせるよう議論する」とのべ、天引きの方向をにじませました。

 児童福祉施設などにいる子どもに支給されないことも、子ども手当の趣旨に反し、大きな問題です。



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