2010年2月22日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

今、注目の小水力発電


 水車を使って電力を生み出す小規模な水力発電所は、まちの中の狭い川や農業用水路でも設置できます。この小水力発電がいま、地球温暖化防止対策のため再生可能な自然エネルギーとして注目を集めています。(栗山正隆)


街の川に水車 支える住民

山梨・都留の場合

写真

(写真)民家の間を流れる家中川に設置した「元気くん2号」=18日、山梨県都留市

 山梨県都留(つる)市の市民は、江戸時代につくられた家中川(かちゅうがわ)を農業、生活、城の堀の用水として利用してきました。市は、家々の間を流れる幅約3メートルのこの川を使って小水力発電の普及・啓発を掲げて小水力市民発電所づくりをしています。

 市は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構から自治体初の補助(約1500万円)を受け、2006年に総建設費約4300万円で小水力市民発電所「元気くん1号」を設置しました。総建設費のうち1700万円は市民に債権を購入してもらってつくりました。債権の応募者は予定の4倍も集まり、関心の高さを示しました。

 市役所敷地内に流れる家中川に設置された「元気くん1号」は直径6メートル木製下掛け水車で最大20キロワットの発電能力を有しています。電力は市役所の庁舎で使う電力量の約13%を供給してきました。夜間や休日など使用量の少ないときは、電気事業者に売電しています。

地図

 市は今春、「元気くん2号」を完成させ、4月から庁舎はじめ市の施設へ電気を供給します。民家の間を流れる家中川に直径3メートルの金属の水車による発電所を設置しました。最大発電能力は19キロワットです。総建設費約5400万円のうち市民の債権購入は約2300万円です。

 今月18日に、「元気くん2号」の見学会が行われました。鈴木康太政策形成課政策担当主任が「1号も2号も3月末まで、県の河川工事で家中川の水が止められているので、動かせないのです。平成23年(11年)に3号をつくる予定です」と話しながら、市民に小水力発電所の案内をしていました。

 日本共産党の小林義孝市議は、地球温暖化防止対策のため再生可能な自然エネルギー活用の重要さにふれながら「小水力が評価された機会を生かし、国に対してCO2削減の努力を求めることが必要ではないか」(08年3月定例市議会)、「小水力発電の推進。新エネルギーの総合的な導入によるエコ社会の実現を」(09年9月定例市議会)と訴えてきました。


自然エネルギーの6割

日本の風土に合致

 日本で自然エネルギーによる電力供給量の61・05%(熱を含む供給量48・14%)を小水力発電(1万キロワット以下)が占めています。風力発電が14・80%(同11・67%)、太陽光発電が7・74%(同6・11%)です。これは2009年12月24日付で千葉大学公共研究センターと特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所が「永続地帯2008年版報告書」で公表したものです。

 両者は共同で06年から全区市町村の自然エネルギー利用状況を調査・研究し、毎年、その結果を公表しています。「永続地帯」とは、「その区域で再生可能な自然エネルギー」で「その区域のエネルギー需要を賄うことができる」ところをいいます。自然エネルギーの自給率最高は大分県29・85%です。都留市の山梨県は15位7・99%です。

 自然エネルギーの供給量は発電量で前年比3・2%増(熱を含めると2・6%増)です。「報告書」はこの状況について、「90年比で温室効果ガス排出25%削減目標に照らすと低すぎます。自然エネルギーに関する導入促進措置を抜本的に強化する必要」があると記述しています。

 「報告書」づくりをした千葉大学法経学部の倉阪秀史教授は、日本が世界で上位の降水量であることを紹介し、「水を海に流すだけでなく、水の流れで水車を回し力にする小水力発電は日本の風土にあっています。水が流れる落差があればいいのですから、日本には小水力発電の余地はあります」と述べます。倉阪教授は小水力発電の課題を「政策的バックアップが弱いのと、水利権とか複雑な規制」をあげ、「技術的開発もし、地域での小水力発電の促進を」と話しています。


小水力発電って?

 小水力は河川の水をためずに、そのまま利用する発電方式です。小水力の規模は世界で統一されていませんが、ヨーロッパ小水力発電協会では1万キロワット以下としています。日本では、電力業界が1000キロワット以下を小水力として扱ってきました。新エネルギー法の施行令改定(2008年4月施行)で1000キロワット以下を「新エネルギー」に認定したこともあって、これを小水力としているところもあります。(全国小水力利用推進協議会ホームページから作成)

党の予算組み替え案

 2020年までに温室効果ガスを1990年度比で25%削減するとした国際公約を果たすためには、産業界との公的削減協定の締結が不可欠である。住宅用太陽光発電パネルの設置補助金の増額にとどまらず、その他の再生可能エネルギーの利用に関する補助金も大幅に拡大する。自然エネルギーの利用拡大にあたっては、周辺住民に被害を及ぼす新たな公害を引き起こさないようルールを確立する。


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